厳かな雰囲気に包まれた館。
玄関へと続く庭の入口の鉄柵は不退転の意志を表すかの如くそびえ立ってい⋯⋯たのだろう。何者か(霊夢と魔理沙だろうが)の襲撃にあって大きくひしゃげていた。
そして、一番気になったのはひしゃげた鉄柵の向こうで大の字に伸びている女性。中々際どい中華ドレスを身にまとい、スラリとした健康的な四肢が特徴的だった。
心の中でお邪魔しますと断りを入れて侵入する。
「大丈夫⋯⋯ではないか。ヒール〈治癒〉」
額に手をかざして魔法を詠唱する。こころなしか彼女の顔が和らいだ気がした。
これを放置して中に入りたい気持ちは山々だが、この娘を一人にするのも気が引けるので意識が戻るまで待つことにする。待ってどうするんだと言われても返答には困るのだが。
「⋯⋯先、行かないの?」
「ああ、まあ。一応不安だからな」
「そ。優しいのね」
森で助けた幼女ことルーミア。どうやら彼女に懐かれたらしく、常に黒い霧になってふよふよと俺の周りを漂っている。
急に声をかけられると心臓に悪いからやめて欲しい。と言うと、
「意外とジョークのセンスはあるのね」
と返された。確かに臓器はないけどさ。
「私が見張っててあげるから行っていいよ」
「む、そうか?なら厚意に甘えよう。すまない」
紫さんから霊夢の支援を頼まれた以上、これ以上道草を食っている場合ではない。はやる気持ちを抑えつつ彼女たちに背を向いて歩き出す。
「どーいたしまして」
ぐぅ。と中華娘のいびきが背後から聞こえた。
気絶しているのかと思ったら寝てたのかよ⋯⋯
「おお、これはまた。洒落た所だな」
半開きになった扉から中に入ると、まず最初目に着いたのはホールの豪華絢爛なシャンデリアだった。下に目をやると、薄ぐらくてハッキリとは見えないものの、汚れ落としとして機能しているか疑うほど綺麗なカーペット。
数歩進んでホールへ出ると、見た目以上に奥行きのある内装。ご丁寧にもこの館の主人の肖像画やら、欧米の言語で何やらポエムみたいなものが飾られている。その一つ一つ全てが様になっていた。
「⋯⋯どこか既視感のある場所だな」
いや、どこか。というあやふやな記憶ではない。ハッキリと浮かんではいるものの、衝撃的すぎて信じることができない。
細々とした部分は違うものの、全体の雰囲気は俺が⋯俺の仲間達が共に冒険をする拠点に選んだ場所。ナザリック地下大墳墓であった。
「ふっ、まさかここに彼らは居たり。なんてな」
そんなはずは無い。頭では理解しているつもりだが、何気なく物陰からひょこっと顔を覗かせてもおかしくないくらい、いやむしろそれを望んでしまう程感情が高ぶっているのが感じ取れる。
⋯⋯まあ、期待しないでおこう。通る場所は隠し扉などがないか隅々まで調べるくらいにして、まずは霊夢たちとの合流が最優先である。
探知系魔法を発動。足元付近の地下から一人反応があった。
二人じゃない?が、分断されている可能性も十分ありえる。むしろこのような場でまとまって行動するのは難しい。
さてどう行こうものか。地面をぶち破る選択肢は対象者が瓦礫で圧死することを考慮して論外。離れた場所の地面を⋯⋯いや、それも何があるか分からない以上危険か。地下が火薬庫だったら普通に死ぬ。
となると、正攻法しかなさそうだ。
「ゲームでもこういう場合は大抵館の奥深くに行かなければならないんだよな⋯⋯」
まずはこの地下に行くことを目標に行動することにしよう。その道中で霊夢か魔理沙を発見できたら、それでよし。
行動の指針を立てた俺は、後に紅魔館と呼ばれるダンジョンの攻略を始めた。
霊夢たちとはぐれた癖に随分のんきに行動してるなぁと書いてて思いました。