迷 子 に な っ た 。
笑い事じゃない。マジでしくじった。
ゲームじゃないというのに、かつてのダンジョン感覚で歩き回り、マップから全体図を推測しようとコマンドを開こうとして気づいた。ここは現実だと。
ドクドクと焦りを助長する心臓の音は聞こえない。不安が芽生えてしまうような身体を伝う汗も出ない。少しの努力で冷静さを取り戻すことはできた。
大丈夫。活路はある。
「階段を登っていないからここは一階。窓がない壁のみということは、ここは入口からも出口からも遠い中間地点辺り。物音一つなく、探知系魔法に誰も引っかからないということは、少なくとも霊夢たちには近づいていないみたいだな。状況は最悪か」
心の中で呟くだけだと必然的に視野が狭くなりがちなので、声に出して状況整理。
来た道を引き返そうにも、右が左に見えてしまうこの状況では無理に等しい。となると、やはり前に進み続けるしかないようだ。
「ちっ、探知系魔法にほとんど反応を示さなかった時点で予想はしていたが、この館はナザリック並み⋯⋯は言い過ぎか。それでも中堅のギルド拠点くらいはあるか?」
トラップはない。マップが開けずハッキリとした目的地が分からないとなると、こっちの方がやや悪質ではある。
いつか歩いていれば、紫さんがここに居たのねとか何とか言って助けてくれる⋯⋯なんてことは無く、気づけば錆び果てた金属製の扉の前にたどり着いた。
「⋯⋯なんだこれ」
一件、変哲の無い扉。錆びれ具合からも”あまり”使われていないことが分かる。
探知系魔法は未だに何の反応も示さない。ただの直感。だが、そういうのは大抵当たるものだ。
「居る、よな。何か」
俺と同じく迷子になった霊夢か魔理沙か、はたまた敵か。一筋の希望を見いだして、扉を開放。地下へと続く階段が螺旋状に渦巻いていた。
カツ、カツと一段ずつ降りてゆく。並行して強化魔法の詠唱も行い準備は万全。
地下にたどり着くと、そこにはまた一つの扉があった。いやマトリョーシカかよ、と突っ込みを入れて扉を空ける。人はすぐ目の前にいた。
「⋯⋯かーごーめ、かーごーめ」
子ども部屋だった。
「かーごのなーかのとーりーはー」
二つの人形が動いていた。
「いーついーつでーやーるー」
背中に羽が生えていた。
「よーあーけーのばーんにー」
その背中は羽よりも小さかった。
「つーるとかーめがすーべった」
ゆっくりとこちらを振り返った。
「うしろの正面、だあれ?」
「⋯⋯モモンガだ」
嘘、ガイコツ。そう呟いた彼女はニタァと笑った。