モモンガの作中の服装は茶色いボロ布をまとっているような感じです。ググると出てきます
「初めましてモモンガさん。私は八雲紫。幻想郷の賢者にして、管理するものです」
「結界を壊した非礼をお詫びいたします。よろしくお願いします」
何をお願いするんだよ。というツッコミはさておき、さてこの方が霊夢の言っていた八雲紫さんか。
雰囲気はどことなくアルベドに似ているような気もするが、中身は全然違うだろうな。あいつはビッチだけど、この方はそこら辺しっかりしてそうだし。
「さて、モモンガさん。単刀直入に聞きます。あなたは何者ですか?」
何者、か。まあ彼らからしたら、今の俺は不審者極まりないから至極当然な質問だろう。
「妖怪としてなら、種族はスケルトンです。ここに来た経緯は⋯⋯自分でもよく分かっていません。転移した、と言えば適切なのでしょうか。少なくとも俺はこの世界の住人ではないです」
道中の霊夢による説明を聞く感じ、ここ幻想郷は外の世界と隔てられた妖怪たちの楽園、言わば墓場と言ったところか。ここが崩壊すれば彼らは消滅してしまう。だから今回のようなことは天変地異みたいなものだと説明を受けた。
その外の世界も、どうやら俺の世界とは違って文明はあまり発達していないようで人工知能に家事をやらせたりはしていないらしい。
つまり、俺はどういうわけか異世界に転移してしまったことになる。
「なるほど、ちなみに元の世界へ帰りたいという意志は?」
うーん、特にないかなぁ。
帰ってもどうせ待っているのは社畜ライフと絶望。ユグドラシルもサ終してしまったし、正直あそこで生きる価値を見いだせないのが本音だ。
「⋯⋯現状は、俺もここに住みたいと思っています」
霊夢に着いていっている時に見た美しい景色。俺はそれの虜になってしまった。といえば良いのだろうか、この土地にはなにか強く惹かれるものがあった。
「住みたい、ですか」
これはまた面倒なことをと言わんばかりに、八雲紫は口元を扇子で覆い、他所へと視線を向けた。
まあ、確かに自分の土地にズカズカと入り込んだ時点で心象は最悪なのに、そこに住まわせて欲しいっていうのも難しい話だろう。
⋯⋯俺なら断ってるね。
「まあ、幻想郷は全てを受け入れる楽園ではありますが⋯⋯人を襲いませんか?」
「襲いません」
「魔法を使いませんか?」
「使いません」
「力は暴発したりしませんか?」
「しません」
「その保証は?」
「⋯⋯理性はあります」
「でも、博麗大結界を破壊しましたよね?」
「⋯⋯⋯⋯」
こうなるのが当たり前だ。加えて俺は異形種。この世界の妖怪がどんな感じか分からないが、紫さんを見る限りザ・妖怪というよりも人の原形を保っている場合が多いのだろう。
もしかしたら、紫さんはそういう俺への風当たりも気にしているのかもしれない。差別は簡単には無くならないし、ユグドラシル(異形種狩り)でもそうだった。
うん。当たり前のことだ。
「いや、気が変わりました。紫殿。私は元の世界へ還る方法を模索しますので、外の世界へと送ってください」
「⋯⋯!よろしいのですか?」
「ええ、まあ。人の目を誤魔化すことには、ある程度検討がついていますし」
魔法で外見はどうにでもなるし、身体はスケルトンだから食事も要らないしな。
俺はスっと立ち上がると霊夢にも軽く会釈をしておく。
「一日と経たない関係ではあったが、ありがとう」
当の本人はどこか不満気な感じであったが⋯⋯もはや何も言うまい。
何かを察したのか足早に去ろうとする紫さんに着いていこうと、俺も霊夢に背を向けて部屋を去ろうとすると、
「ねえ、紫」
「どうしたのかしら?霊夢」
「卑怯だと思わない?」
「何が?」
問答を始める霊夢と紫さん。少し険悪な雰囲気が流れつつあるが⋯⋯第三者の俺からすると気まずいことこの上ない。
きっと、霊夢は無駄に俺を庇おうとするのだろう。何となくそう思った。実際そのようで、
「幻想郷は全てを受け入れるんじゃないの?」
「そうね。ここに被害をもたらさない限りは、ね」
「モモンガさんをどうして断るの?見た目がおぞましいから?自分より強いかもしれないから?」
「違うわ、霊夢。事情があるのよ」
「知ったこっちゃないわよ」
あわわわ、まずい。大変マズイ。
自分が率先して霊夢を宥めるべきなのだろうが、こういう時に限って言葉が浮かばない。
「その事情って何?言ってみなさいよ」
「あまり刺激しない方がいいわよ、霊夢」
「いつも何かを匂わせるだけでハッキリと言わない。大っ嫌いだわ。あんたのそういう所」
ケンカ⋯⋯昔、ユグドラシルを遊んでいた時に仲間だった二人の姿が彼女たちと重なった。
一方は正義心の強い人だった。右も左も分からない初心者の俺を助けてくれて、優しく遊び方を教えてくれた人。
一方は自分の信念を持っている人だった。たとえ道理に反することをやるとしても、仲間の利益になるのなら進んでやる人。
仲のいいギルドではあったが、その二人は例外で何かある度に口喧嘩をしていた。それが今まさにこのような感じで⋯⋯俺とか他の仲間がよく仲裁に入っていたっけ。
⋯⋯懐かしい景色だ。
「⋯⋯ふふっ」
「ーーーだから私はっ!⋯⋯って、何笑ってんのよ」
「失礼。二人の喧嘩している様子が、昔の仲間とそっくりだったので」
「昔の仲間?」
「ええ、まあそうですね。一方は困っている人がいたら誰であっても手を差し伸べる人で、一方は組織を想って非情な選択も取れるような人でした。⋯⋯あなた達のように」
「なっ!別に私は助けてるんじゃなくてっ」
俺のあまりにも能天気な発言に、さすがの紫さんも毒気が抜かれたようだ。
剣呑な雰囲気を納めると、小さくため息を一つ。それには若干の申し訳さも含まれているように思えた。
「どうやら私は貴方のことを勘違いしていたようね。⋯⋯先程の失礼をお詫びするわ。幻想郷は全てを受け入れる。ええ、誰であろうと」
そして、打って変わって穏やかな目を俺に向ける。
仲間と見なした者に情が厚いところも、あの人とそっくりだった。本当に懐かしい。
「よろしくお願いします」
何をよろしくお願いするんだよ、と問われても今なら言える。そんな気がした。