東方骸骨録   作:饅頭こわよ

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あと三話くらいで原作に入る予定です。



独りではない

 

「それじゃあ私は寝るけど、アンタはどうすんの?」

「む?そうだな。折角だし、ここ一帯を散歩しようと思っている」

 

時刻は22時前。

博麗神社は森に囲まれているためか、この時間になると獣や虫の鳴き声が止まない。都会に住んでいた俺にとっては新鮮な体験で、幼き日の少年心が蘇ってしまう。⋯⋯少々耳障りではあるが。

 

「骸骨が深夜徘徊してる姿って結構シャレにならないわよ。⋯それに、面倒事を引き起こされても困るから今日はここに居なさい」

「どうしてもか?」

「何度も言わせないで」

 

言葉は非常にとがっているものの、布団に片肘をついて話している霊夢はどこか気分が良さそうだった。

別に外に出ないことはいいのだが、しかし困った。ここでは何もすることがない。まあ、自分自身にスリープ魔法をかければ眠れないこともないのだが。

 

「それでは、俺も寝るとしよう」

「え?睡眠は必要ないんじゃないの?」

 

不意をつかれたのかキョトンとした顔の霊夢。普段の(出会って一日も経っていないが)ムッツリとした顔からは想像もできない、少女らしさのある顔だった。

 

「必要ではないができないわけではない。最初はそのつもりではなかったが、これからは睡眠を取ることにしよう」

「どうしても嫌なら別に外に出ても構わないのよ?」

 

出ていいのかダメなのかどっちだよ。

案外、コミュニケーションが苦手なのか?紫さんもずっと独りきりって言ってたし、不思議なことではないのだが。

 

 

「いい。居候の身としてワガママは言えん。」

「⋯⋯あっそ。布団は?」

「座って眠ろう。そっちの方が寝つきがいいしな」

 

嘘では無い。休日はすぐにユグドラシルをプレイできるよう椅子で寝るのが習慣化していた。

 

「変な奴ね」

「そうみたいだな」

 

クスクスと笑いがこぼれる霊夢。悪い気はしなかった。

 

「それじゃあ、おやすみ」

「うん。おやすみ」

 

スリープの効果持続時間ってどのくらいなのだろう。と思いながら魔法を発動し、意識は闇の中へと吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつまで寝てんの!!」

「⋯⋯⋯ム」

 

朝一番。子鳥のさえずりが心地いい晴れの日。

お祓い棒で頭蓋骨を小突かれながら、怒声で意識が覚醒した。

 

「ああ霊夢か。おはよう」

「随分と呑気なのね、この寝坊助は!」

 

しまった。どうやらスリープの効果持続時間はかなり長いようだ。調整する必要があるな、これは。

目の前でプリプリと怒っている霊夢はどうやら朝が強いらしい。昨夜の寝間着姿ではなく、やたら露出の多い巫女服に着替えて朝食も済ませているようだった。

 

「人里で妖怪の被害が出たから討伐に向かうのよ。あんたは留守番をしてなさい」

「俺は行かなくていいのか?」

「中級妖怪程度なら朝飯前よ。帰りに買い出しをするから遅くなるけれど、それでも昼過ぎには帰ってくるわ」

 

それに、スケルトンが着いてきても普通の人が見たら卒倒するでしょうしね。と呟く霊夢。なんともごもっともである。

 

「留守番中にして欲しいことはあるか?家事なら一通りできるぞ」

「来客の応対を頼むわ。⋯⋯そうね、金髪の黒帽子を被った背丈が私と同じくらいの子がきたら相手をしてあげて。それ以外は無視でいいわよ」

「承知した。友達か?」

「そんなところよ」

 

時間もそれほど無いのだろう。霊夢は足早に会話を切り上げると、部屋に直接繋がる庭先へ出た。

 

「それじゃあ、行ってくるわ」

「ああ。行ってらっしゃい」

 

久しくしたことのない、いつぶりかの会話。

それでも、忘れられない温もりがそこにはあった。

 

それは彼女も同じなのだろう。

独りで空を飛んでゆく姿を見て、俺はそう思った。

 

 





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