東方骸骨録   作:饅頭こわよ

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困ったちゃん

「平和だ⋯⋯」

 

 陽の当たる縁側。のどかな喧騒。

 ぽわぽわとした気持ちよさに包まれながらぼーっと腰掛けている姿は、正におじいちゃん。なんて、くだらないことを思ってしまうくらいには、ここ幻想郷は平和だということ。

 

 現在は霊夢の家、博麗神社に住まわせてもらい、早くも一日が経ったが既にやることが無い。

 仕事とゲーム漬けの日々を比べたら断然健康的ではあるのだが、暇というものは厄介なものだ。ゲームのように時間を早送りすることはできない。

 

「⋯⋯にしても、MPはゲームの頃と最大値は変わってる気がしないし、威力もかなり落ちてるけど魔法も発動できる。随分とご都合な感じではあるよなぁ」

 

 魔法の威力低下はゲームにおいてならば致命的なものだ。しかし、ここは現実。人を即死させたり、操れる魔法を発動できても恩恵はかなり薄い。

 ただでさえ、博麗大結界? なるものを破壊した前科があるのだ。暴力的な魔法を使う気になれなかった。

 

「ゲーム時代に死霊系の魔法を沢山覚えたのは良いものの、死体がないと意味ないし、そもそもそういう行為はここのルールに違反するらしいし。もうちょっと魔法のバリエーションを増やしても良かったかもなあ」

 

 ゲーム時代の楽しみを引き換えとしない場合の話である。

 とはいえ、自分一人だけが場違いな力を行使するというのも可笑しいことだ。これ以上魔法を増やせない以上、霊夢の言っていたスペルカードなるものを習得するべきかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい霊夢ー。いるかー?」

 

 太陽が真上に昇った頃の昼過ぎ。

 背丈は霊夢と変わらず、線の細い少女が博麗神社を訪れた。もしかしてこの子が霊夢の言っていた少女か? 金髪で黒帽子。特徴は一致する。

 

「霊夢は妖怪退治へ行った。そろそろ帰ってくる頃合いだろう」

「げっ、誰だお前」

 

 なんか、こう、紫さんに関しても言えるのだが明らさまに嫌な雰囲気を出すのはやめて欲しい。俺も元とはいえ人間なのだから流石に傷つく。

 

「俺の名はモモンガ。昨日ここの土地へ迷い込んでしまって、この神社に居候している者だ。⋯君は?」

「あいにく、骸骨に名乗る名前は無いんだぜ! カルシウム足りてるか? 私の箒で折れたりしないか? ほら、特にここの肋骨とかさ」

 

 ツンツンと不躾に箒の先で俺をつついてくる少女。⋯⋯まあ、子どもはこれくらい分別のない方が普通なのだろう。霊夢が大人びすぎているだけか。

 俺としても会話が成り立つのなら悪い気はしない。骸骨だからってビビられるよりは百倍ましだ。

 

「あーあ、霊夢が居ないってんならここに用はねーな。おい骸骨「モモンガだ」⋯⋯いやどこにモモンガの要素あるんだよ。骨だろ。というか本当に誰だよ。もしかしてお前か? 昨日博麗大結界を突き破った侵入者ってやつは」

「概ねあっているが侵入した訳じゃない。転移したんだ」

「何じゃそりゃ。紫の許可を取ってないなら意味は変わらないだろ」

 

 ぐうぅ。何も言い返せない。この年齢でここまで頭が回るとは、小卒の俺と地頭が違う。

 言葉に困って無言で立ち尽くしていると(決して言い負かされたわけではない)、少女はある提案をしてきた。

 

「なあなあ! どうやって博麗大結界をぶち壊したんだ!? 私一回試したんだけどさ、全然上手くいかなくって。コツとかあるのか!?」

「すまないがそこは俺もよくわかってないんだ。気がついたらここにいた」

「つまり秘密ってことだな! よしっ! それなら力づくで聞き出すまでだ! 動くと撃つぞ! 今すぐ動く!」

 

 そう少女は一方的に宣戦すると此方へ魔道具? みたいなものを向けてきた。数歩近づけば触れてしまえるような距離で。

 マズイ。位置的に俺の後ろは博麗神社。何が飛んでくるか分からない以上、受けるという選択肢はできない。

 

「ちょっと待て! あまりにも急すぎるだろう!」

 

 時間稼ぎの為に両手を挙げて抗議をし、少女の動きが止まった一瞬の隙にフライを発動して上空へと逃げる。

 

「あっ、逃げんな!」

 

 少女は魔法使いらしく箒に乗ると俺を追いかけた。

 

「ウォータースプラッシュ!」

「うわっ、と! 中々やるな!」

 

 うわー、どうするどうするどうする。なし崩しに戦闘が始まってしまったし、短絡的に攻撃した以上降参はできない。

 なんで後先考えず行動しちゃうんだよ、俺。

 

「震えるぞハート燃え尽きるほどヒート! 刻むぞ血液のビート! マスタースパアアァァァク!!!!」

 

 それって某ジョ○ョのネタだよな!? なんでこいつが知っているんだ!? 

 ⋯⋯というかまずい。流石にバフがかかってない状態であの光線をくらうと洒落にならん。普通に乙る。

 

「魔法最強化・雷光!」

 

 彼女へ向けた右手からバチバチッと火花が飛び散った瞬間。昼時の幻想郷を照らす程の光を放つ光線が放たれた。

 そして、俺と少女の丁度中間地点で光線がぶつかり合い、相殺される。

 

「おいおい、私の魔法を正面からいなすとかマジか? その実力は認めるぜ。勝つのは私だけどな!」

「⋯⋯⋯⋯」

 

 箒にまたがり、魔道具を手にして金髪をなびかせながら特攻する少女。その目には未知のものに対する好奇心のようなものが燃えているようだった。

 見覚えのある何かだった。

 

 

「そうらっ! もう一度だ! スターダストレヴァリエ!!」

 

 彼女を中心に渦状に展開された弾幕が俺を襲う。

 そうだ。あの雰囲気は、どこかで。

 

 

「⋯⋯⋯⋯グッ!」

「ほらほらほらほら! どうだ!」

 

 弾幕の一つが俺に命中し体制が崩れる。

 それを狙ったかのように、少女はもう一度魔道具を此方に向けた。

 あくまでも自分本位な立ち振る舞い。

 他人の気持ちを考慮しない強引さ。

 いたずらが成功したかのような勝ち誇った笑み。

 そして底抜けに明るい性格。

 

「るしふぁーさん⋯⋯」

 

 一人のギルドメンバーの姿が頭をよぎった。

 

「決めるぞ。マスタースパーク!!」

「ッ」

 

 そうだ。こういう場合、どうすれば事態が丸く収まるのか。

 ユグドラシルの仲間達と彼の扱いについて頭を悩ませたること多数、一つの結論に達したことを思い出した。

 

「ハァ⋯⋯ウォール・オブ・スケルトン」

 

 光線が命中する直前に骨の壁を展開。

 そして、自らフラフラと地上へ降りていき大の字に倒れた。雲ひとつない青空から魔法使いが迫ってくる。攻撃の意思は既に無いようだった。

 

「やったか!?」

「ああ、君の勝ちだよ。降参だ」

 

 

 程々に戦って降参する。

 これが彼への、この魔法少女への対処法だった。

 

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