東方骸骨録   作:饅頭こわよ

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始まり

「お前も魔法使いなのか?」

「正確には魔法詠唱者だ」

「何じゃそりゃ」

 

特に違いは無い。そう言うと少女(魔理沙というらしい)は深くため息をついた。

⋯⋯うん、確かにさっきのは混乱するだけだから訂正する必要はなかったけどさ。明らさまにネガティブな感情を全面に押し出すのはやめてくれ。傷つく。

 

「得意属性は?」

「一応、死霊系を専門としている。その他の属性もある程度なら扱えるが」

「シリョー系⋯⋯ゾンビとか?」

 

この感じは、詳しく説明しても理解できないと思うので軽く頷いておく。

 

「ふむ。さっきの骨の壁もそうだが、お前って不思議な奴なんだな。いや、だからこそ幻想郷に引き寄せられたのか?」

 

ブツブツと何かを呟く魔理沙。

彼女からしたらかなりややこしい話だと思うのだが、それでも考察を始めるのはさすが魔法使いといったところか。

 

「今ここでゾンビとか作れないのか?」

「死体がないと無理だ。それと、感情的な面であまり使いたくない」

 

なにせ、ぐちゃぐちゃで紫色の顔をした死体が呻き声をあげるのだ。ゲームで初体験した日の夜の寝付きは最悪だった。

 

「つまり、殺しがご法度になったここでは完全に腐ってるってわけか」

「その認識でいい」

 

ご法度になった⋯⋯まるで昔は認可されていたとでもいうような口振りだな。

まあ、ここは深く考える必要はないだろう。昔にタイムスリップするわけでもないのだし。

 

「ああそれと。魔理沙?だったか」

「人の名前は一回で覚えろ」

「す、すまん。スペルカードとやらについて教えて欲しいんだが」

 

夢想封印。マスタースパーク。

およそお遊びで作られたとは思えないほどの威力。本人たち曰く、俺に対しては最大出力で放ったらしいがそれでも尚恐ろしい。

 

「はあ?まだ霊夢から説明を受けてないのか?」

「いや受けていないといえば嘘にはなるんだがな。具体的に言うと作り方を教えて欲しいんだ」

 

そう言って懐から札を取り出す。

たしか、これを掲げて技を宣告する。そして弾幕を放つ。ここまでは良い。問題は弾幕だ。あれを魔法でどう出せばいいのだろうか。

 

「霊夢は陰陽玉と札。魔理沙は「金平糖だ」こ、コンペー⋯⋯トー?」

 

金平糖って、あの粒粒とした砂糖のあれか。幻想郷は何でも受け入れるとは聞いていたが、いやはや何でもありだとは。

俺は金平糖の武器相手に苦戦していたのか?可笑しい話だ。

 

「弾幕は何でもいいさ。別に、その辺の石ころを大量に使ってもいい。私たちのような人間は霊力から生成したり、妖怪は妖力から生成したりするけどお前は無理だろ。だからその辺のテキトーな何かを使え」

「いや、それは分かったが⋯何故金平糖を?」

「そりゃあれだ」

 

魔理沙は胸を張ってふふんと鼻を鳴らす。

 

「ロマンってやつだ」

 

俺にとって納得する理由には十分だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔理沙、どんな感じだった?」

 

時刻は夜。風呂上がり。

中級妖怪の退治に手こずった挙句、人里の騒ぎに巻き込まれた散々な一日。そう霊夢はカレーを食べながら零した。

 

「年相応の少女ではあったな。実力はその限りではなかったが」

「戦ったの?」

 

眉を八の字に下げて質問する彼女の顔は心配の色。この感じは、あの少女より俺を思ってのことだろう。魔理沙の友達なら、戦うまでの経緯もあらかた想像がついたようだった。

 

「ああ。負けたよ。強いな、彼女は」

 

建前でも何でもない。本音だ。

実力は霊夢に一歩及ばないにせよ、それでも出来れば戦いたくない相手だった。事前に防御バフをかけておけばあるいは⋯⋯いや、少女相手にそこまでムキになるのも馬鹿らしい。

 

「怪我は?」

「その前に降参したさ」

 

安心したように霊夢はコップの水を飲み干すと、モソモソと器に盛ったカレーを食べ始めた。言葉は素っ気ないが、意外と感情は行動に出るんだな。

 

「彼女は負けず嫌いよ。もし今後再戦を挑まれても、今回のようにいなしてあげて頂戴」

「承知した⋯⋯って、誰が言ったと思う?」

 

俺の声、にしてはあまりにも幼い。霊夢の声、にしては少々低い。紫さんの声、にしては妖艶さが足りない。

ばあ!と霊夢の背後から飛び出した白黒の魔法使い。名は言うまでもない。

 

「むぅ。驚いてはくれないんだな」

「探知系魔法に引っかかった時から警戒はしていた。しかし、もしカレーが霊夢の喉に詰まったらどうするんだ」

「いや、過保護かよ」

 

俺はお父さんだぞ!(使命)

しかし、霊夢の呆れた様子を見るに彼女も既に把握しているようだった。

 

「どきなさい。邪魔」

「アハハ!どいてやらなーい」

「今食べてんのよ」

「じゃあ私がアーンしてやる。スプーンじゃなくて箸でもいいか?洋よりも和に憧れてるんだ」

 

ガヤガヤとちょっかいをかける魔理沙と、それを邪険に扱いながらも口角が若干上がっている霊夢。

俺のように互いに互いを探りながら進める会話ではなく、じゃれあうようなやり取り。なんだ。意外と仲はいいんじゃないか。

 

「もう、ホントにやめて!」

「分かった、分かったよ。離れるから」

 

へへへと笑いながら魔理沙はダル絡みをやめると、俺の隣へと座った。さすがにルシファーさん程KYというわけでもないらしい。

 

「にしても、何故ここに?」

「ん、まあ色々とだな。本当は魔法の研究をする予定だったんだが、そうもいかない事情ができたってわけさ」

 

その事情とは?⋯⋯そう聞くのは野暮ってものだろう。

少なくとも霊夢が食べ終わるまで待つ必要がある。そう考えたら霊夢って食べるスピード遅いな。いやさすがにそこまで矯正しようとは思わんが。

 

「骸骨は食べないのか?」

「食べ物が落ちて無駄になるだけだ」

「へえ。知ってた」

 

昼間よりもテンションが高い様子だ。とすると、中々縁起のいいことでも起こったのだろうか。

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯ごちそうさま。それで、話は?」

「お、食べ終わったか。最近、氷の湖に気味の悪い館が転移したのは知ってるだろ?」

 

初耳だ。まずい。話についていける気がしない。

 

「氷の湖はここから10分にある場所よ。どんな感じかは、そのまんま」

 

すかさずフォローを入れる霊夢。

 

「ああ、そうか。骸骨は新入りだもんな」

「すまない。分からないことは後でまとめて聞くから、まずは全て話してくれ」

「もちろんさ。んで、アイツら、どういう訳かコソコソ裏で動いているようでな。そりゃあ怪しさがぷんぷんってわけさ」

 

真剣に耳を傾けて聞く霊夢。

普段はツンツンとしていて幼さもある顔だが、今ばかりは幻想郷の調停者としての顔である。

 

「そして、今日ようやくあいつらの目的をつかめた」

 

ニヤリ、魔理沙は笑う。

 

「幻想郷中に紅い霧をばらまく。つまり、異変さ」

 

 





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