「……今日は来客が多いようだな」
真っ白な布を被せた簡易的な寝台に腰掛け、淡く桃色に光る水の奔流を見上げる壮年の男の人がいた。この人が、鳴海お兄さん達の拳法の先生なんですね。
「私は離れていますね」
「ああ、そうした方が良さそうだね」
私とルシールおばあさんは彼らの傍を少しだけ離れて、綺麗な淡く桃色に光る水を見上げている。こんなに綺麗な水も飲んでしまえば「しろがね」になる。
あの水を飲んでも私は「しろがね」に変わることはないし、擬似的な不老不死になることもない。糸色の血筋には「
ひょっとしたらツカサ君の狙いもそれなのかもしれないと考えながら鳴海お兄さんに視線を向けようとした刹那、緑色の衣装を身に付けた老人が立っていた。
「パンタローネ、お前さんが来るとはね」
「ルシール、忌々しいしろがねか。そして、糸色の血を引く人間を連れているということは、その女の身体に『柔らかい石』はあるのだな?」
「え?」
「お生憎様、この子に入っていなかったよ」
「……やはり、あちらか」
あちら?
その言葉を聞いた瞬間、巓ちゃんの事が頭の中を過る。私より強くて何でも出来る綺麗でカッコいい巓ちゃんを襲おうとしているの?
「私の従姉妹に手を出したら殺しますよ」
「壊すの間違いだろう。人間」
そう私に言い返すパンタローネと呼ばれた
ジャラララッ…!と鉄の擦れる音と共に伸びてきた棍の端を掴み、鳴海お兄さんの真横に着地して電光丸を鞘に納めて、持ち手の長い扇子を構える。
蛮竜が飛び出そうとしたけど。
それを無視して、扇子を突きつける。
「今のはゴムを仕込んだ腕ですか?」
「学習するのは人間の専売特許ではない」
「あんまり無茶するんじゃねえぞ」
「鳴海お兄さんに言われたくないです。ルシールおばあさんは梁さん達を守って上げて下さい。正直、私は怒りでどうにかなってしまいそうなんです」
そう言って私は扇子を振り上げる。
「糸色流舞踊の作法を教えてあげましょう」
「この私に踊りを申し込むか…!」
糸色家は霊能大家です。
ゆっくりと鳴海お兄さん達に微笑み、バッと両の手の扇子を拡げて構え直す。糸色家は各分野に精通し、その殆んどは武術にも用いられている。
私も少しだけ手解きは受けている。
「糸色命、いざや舞いましょうぞ!」