ビュウッ!と空気を圧縮して放つ音を聴きつつ、その衝撃を扇子の親骨を使って払い、つむじ風を巻き起こしてパンタローネの身体を退ける。
「この私相手に風だと!?」
「ホホホ、ミコトも面白い事をする」
怒りを露にするパンタローネを見ながら笑うルシールおばあさんに少しだけ視線を向け、直ぐにまたパンタローネの事を見据えて扇子を拡げる。
風を自由に操る事の出来る発明品『バショー扇』は使いなれている道具に似ているから作っただけですし、そろそろ夏が終わるので御披露目出来なかったものです。
そういう誰かを馬鹿にする意図は無いです。
「命、あんまり無茶するなよ!」
「まだ大丈夫です、鳴海お兄さん!」
「ならば、おまえの風を上回るだけだ!」
手のひらに空いた穴から空気を圧縮して噴射し、高速移動を始めるパンタローネの動きを肉眼で追えず、ゆっくりと姿勢を正して扇子を閉じる。
「…………」
「臆したか!」
「臆病さは必要ですよ、特に貴方は」
急速旋回して手のひらを突き出してきたパンタローネの顎先に扇子を突きつけ、お互いに振るえば確実に相手の命を奪う事の出来る間合いを保つ。
「あの女の血筋と思えない大胆さだ」
「ムッ。私はお母様に似ていると評判ですが?」
そう言って私がパンタローネを見上げたその時、彼の木で出来た目の奥に駆け出している
───ッ、女の子の髪に傷をつけるなんて!
「もう絶対に許さないんだから!!」
カチリと風圧の強弱を最大まで上げてパンタローネに扇子を振り上げた次の瞬間、強烈すぎる突風は山を砕き、彼を何処かに吹き飛ばしてしまった。
「ゔっ、ゲホッ、ゲホッ…ッ…」
ちょっと運動しただけなのに咳き込み、ボタボタと手のひらに零れる血の多さに涙を流しながら、荒く乱れた呼吸を整えられず、お薬を使っても耐えられない。
苦しい、喉が、胸が痛いッ…!
「落ち着きなさい。ゆっくりと息を吐くんだ」
「ゲホッ…ばぃ゛……ずぅ、ごほっ…」
鳴海お兄さんの先生に言われたように、ゆっくりと深呼吸を繰り返しながら身体を起こし、お腹に少しだけ力を込めて空気を吸って、吐いて、吸って、吐いて、それを何度も繰り返していると意識が定まってきました。
流石は拳法の先生です、すごいですね。
セーラー服に血が滲んで恥ずかしくなりながらも「ありがとうございます、鳴海お兄さんの先生」と言えば穏やかに笑って「そうか。