時は少し遡り、飛行機墜落の時へ────。
銀の人形遣い 序
仲町達と組み上げた天幕の近くに墜落してきた飛行機から逃げ出す女子供を優先して助ける刹那、平助と互角以上に渡り合っていた白い長袍の男、命が数日の関係ながらも本当の兄のように慕う男が横切った。
スンと鼻を鳴らせば命の匂いも混ざっている。あの愚図が学校を休んでまで何かをしていることには気付いていたが、あの「しろがね」達と行動を共にしているのかと直ぐに気付き、舌打ちをする。
汚れを知らぬ薄命の花を潰すつもりか。
いや、才賀に嫁いだ類は霊気の使いに長けていた。おそらく巫女としての使命を与えているのだろう。もしくは、あの馬鹿者が勝手に行動しているかだな。
「巓、どうかしたのか?」
「人形の気配だ。前方右側、三歩」
「噴ッ!!」
私の言葉に何も言わずに剛打を叩きつけ、銀色の汚ない物を吐き出す人形を見下ろす。しろがねと共に行動している命も無事だと良いのだがな。
そう思っていたその時、嗅ぎ慣れた血の匂いを感じ取ってそちらを見据える。命の香りと血の匂い。まさか、さっきの人形に攻撃を受けたのか?
「誰だ、貴様は」
「うおぉっ、すげえ美人だ。ちょっとズレそうだったから助けたんだよ。ほら、アンタの妹だろ?まだ、ちゃんと生きてるから病院に運んでくれよ」
「……お前、ダークディケイドか?」
でぃけ?と知らない言葉を呟く平助を見上げると険しく嫌悪と憎悪の眼差しを向けていた。奥手なコイツが真に憎しみを抱ける相手か。
「楯敷ツカサだ。彼氏連れのところで悪いな」
「違う。彼氏ではなく夫だ」
「んぐっ」
「お、おう、すんげえ熱々だな」
私の言葉に顔を赤らめる平助と、なぜか申し訳なさそうにする男を見比べて、私は首を傾げる。なにも可笑しな事は言っていない筈だが?
まあ、そういうこともあるのだろう。
「平助、ソイツから血の匂いがした。まだ他に倒れている糟が転がっている。私は命を連れて病院へ行くから、ソイツは殺しておけ」
「お、おう」
「やっぱり、糸色巓は此方なんだよな」
ニヤリと笑う男を睨み付けるが、恐れた様子もなく慣れているかのように私を見据えている。それに、今の命から懐かしく腹立たしい匂いがする。
蛮竜を使って死にかけたか。
本当に愚図は困る。私という高みに届かぬと知って尚も追いかけてくるのはもうお前だけだ。いや、極稀に刺客は送り込まれてくるな。
退屈しのぎにはなるが、そろそろ飽きてきた。
「ゲホッ、ゲホッ…」
「起きたか」
「て、んちゃ……」
「まだ眠っていろ」
そう言って私は命を眠らせる。