命の再入院の手続きと傷だらけのアイツに悲鳴じみた嗚咽を漏らす才賀善治の姿に不覚にも美味と感じてしまったが、才賀類の視線で悲しみは吸えなかった。
まあ、アイツらの行動次第だろう。
「……何故、しろがねがいる?」
「テンさん、何言ってるんだよ。しろがねはオレらと同じサーカスの仲間だぞ?」
「違う。そっちの男だ」
「ああ、ありゃ平助の拾いモンだ」
「……チッ、アイツの血はコイツのものか」
忌々しく呟く言葉に女のしろがねが反応し、私に詰め寄ろうとした瞬間、血を洗い落としてきたばかりの平助が私と糟の間に割り込んできた。
「退け、ヘースケ!」
「そう言われて退くわけないだろう。巓は俺の女だぞ、大事な女が詰められそうになってるのを庇わない男がいると思うのか?」
「お前ら、落ち着け!しろがねも平助も才賀の嬢ちゃんも怪我人の話なんざいくらでも出来る!今は近所の病院に連れていけねえコイツの介護に集中しとけ!」
そう言って私達を諭す仲町の言葉を全員が聞き入れる。曲がりなりにも団の長を務める男だ。何時ぞや私を追い詰めた羽虫の統率力を思い出す。
アイツは非常にムカつく顔をしていた。
「テン、あとで教えて欲しい」
「知っている事ならな」
私の言葉にしろがねは頷きつつ、後ろの方で眠っているしろがねの男を見つめている。そして、才賀勝から何とも甘美な嫉妬や自己嫌悪、僅かな悲しみの感情を感じ取り、少し涎が垂れそうになってしまう。
その顔を平助に見られていたのか。微妙に嫌そうな表情を浮かべていたが、これでも食べる量は減らしている。それに私が食べれば悪感情は少し治まる。
天幕の準備と道具を準備し始める仲町達を尻目に、私は平助の身体を髪の毛で締め上げる。モゴモゴと口許を動かしているが。
お前は黙っていればいい。
「ブハッ、いきなり何するんだ!?」
「ッ」
「あ、いや、怒鳴って悪い……」
思わず、ビクリと身体が跳ねてしまった瞬間、平助の語気は沈み、私の身を按じるように話し始める。成る程、これが
意外と使えそうだ。
「弱っている巓は可愛い」やら「抱き締めたい」等々の善心による感情を間近で受けるのは少し、かなり気恥ずかしく心臓の高鳴りがうるさく思える。
…………だんだんとムカついてきたな。
「オイ。まさか私を下だと思っているのか?」
「え?いや、そういうわけじゃないが」
「お前がっ、私の物だろう!」