「まさか君に会えるとは思わなかったよ。秋葉巓、今は糸色の名前を襲名して糸色巓だったか?」
「気安く話し掛けるな。鼻が曲がる」
香水を身体に振り撒いて私の接近を阻害するしろがねの人形遣いの先生と呼ばれた男を見据える。私の平助と互角かそれ以上の手練れだろう。
少なくとも人形ごときに遅れを取り、あれほど身体に傷を追うタイプではなく、慎重に物事を進める手合いだ。私の愛する
蛮竜から含牙戴角に冥道残月破を切り離して以降、彼女は大鉾を振るうことは減ったが、今も尚壺や皿を作って世界各地の展覧会を賑やかにしている。
しかし、あの蒼月潮の落書きに何千万と金を釣り上げる奴らの目は腐っているのだろうか。そんなものより美しく存在する愛する
「エレオノール、どうやら僕は彼女に嫌われてしまったようだ」
「テン、貴女は先生が嫌いなのか?」
「嫌いだ。本心を隠して自他を欺く男など反吐が出る。お前の心奪われた男が嘘つきだったら嫌だろう?私は真摯に愛する男の方が好きだ」
そう言うと私は荷台の外に出る。
───すると。何故か笑みを浮かべるヴィルマや顔を赤く染めるリーゼがいた。私は舌打ちをしながら顔を背ける平助に近づき、胸ぐらを掴んで口付けをする。
「腑抜け共め、私は煽りに負けるものか」
「お、おう」
「うらやましぃぃぃっー!!」
「なんで平助に和服JKの彼女が出来るのに、オレ達には出会いや甘酸っぱい恋は訪れないんだ!」
「お前らの下心のせいだろ、それ」
また騒がしくなってきた奴らに呆れていた刹那、時間が止まった。いや、時間が止まったように時間の流れを緩やかに変化させている。
カシャッとシャッターを切る音が聴こえた。
「我に牙剥く貴様は誰だ」
「べつに牙剥くつもりはないが、過去でのやらかしを帳消しにするために来ただけだ。秋葉巓、お前の妖気を糧に新しい怪人を作りたい」
「……子作り前提の付き合いは間に合っている。浮気や不倫は駄目な文明だと私はテレビで学んでいるし、お前の顔は好みではない」
「流石に辛辣すぎないか!?…いや、まあ、確かに伝えるにしては不適切だった。お前の妖気を奪って怪人を何体か作る」
「クク、風情の無い台詞だ」
ゆっくりと髪の毛を巻き上げ、黒い髪は失われて妖気を放出して睨み付ける。あの墜落現場で殺しておけば良かったと今まさに悔いている。