巓ちゃんと鳴海お兄さん、しろがねさんが助けに来てくれたことに安堵しながら勝君の手を握り、一緒に階段を探すために廊下を歩き始める。
勝君はまだ小さな子供なのに、どうして酷いことに巻き込まれないといけないのかと悔しく思いながら、お父様とお母様がいなければ何も出来ない私も優柔不断で勝君を苦しめているのかも知れない。
「大丈夫だよ、命さん」
「……フフ、ありがとう。勝君」
「行こう!」
ぷいっと顔を逸らす勝君に小首を傾げながら廊下の曲がり角を一緒に覗き込み、人がいないことを確認してまた走り出す。「ハアッ、ハアッ…!」と胸を押さえて、直ぐに息切れしてしまう身体が少しだけ恨めしい。
ゆっくりと深呼吸を繰り返して、勝君より先を歩いていたその時、強烈な爆音を掻き鳴らしながら私達が通ろうとしていた廊下の壁を突き破って何かが出てきた。
にんげ……?
違う、これは人形?
「勝君っ!」
「うわあっ!?」
キリキリキリッ…!と歯車の軋み動く音に思わず、私は勝君を後ろに突き飛ばすように倒れてしまったけど。良かった、私も勝君も無事だったけど。
私達が立っていた場所、壁とガラスがちょうど身体の真ん中ひどに横一文字の切り傷が出来ていて、人形の持っているものは巨大な日本刀。
「へ、変だよ、あの人形、糸がないよ…!」
「勝君、今はもっと遠くに逃げよう!」
生き人形。
ずっと昔に糸色本家の蔵書館で読んだことがある。明治時代、天才的な才能と奇想天外な発想を持っていた発明家がいたって、その人の作った人形だ。
視界が掠れて頭が痛いッ、誰か勝君を助けて。あの人形は私に視線を合わせて、勝君には見向きもしないけど。近付いたら勝君でも斬り殺される。
ふと、思わず窓の外を見てしまった。
あのとき、私を助けてくれたロングコートのお兄さんなら勝君を助けてくれるかも知れない。ううん、あの人なら絶対に勝君を助けてくれる。
「勝君、ごめんね」
「え?」
勝君の身体を抱き締めて、生き人形の壊した窓に向かって飛び込み、木に向かって落ちる。大丈夫、怖いッ、大丈夫だよ、絶対に守る。
「うわああああああっ!!?」
「大丈夫っ、勝君は絶対に守るよ」
私はお姉ちゃんだもん!
「……全く、お転婆なところは彼女にそっくりだね」
どこか聞き覚えのある声が聴こえ、木に落ちていく私達の近くを金色の綺麗な蝶々が舞うのが見えた瞬間、バキバキバキッ…!と木々の枝を折り、身体をぶつけながら私と勝君は地面に落ちていく。
死ぬのは怖いけど、守るって決めたら有言実行するのが良い女だってお母様も言っていたんだ。だから、死んでも勝君は守る。