【完結】からくりと踊り謡う薄命の花   作:SUN'S

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斯くも美しき赤 破

「チッ!」

 

「美人の舌打ちは怖いなぁ!」

 

変な鎧を身に付けた男の振るう剣を含牙戴角で受け止め、平助や仲町達に逸れた太刀筋を髪の毛を使い分けて防ぐ度、私の手数は減っていく。

 

お互いに一人で戦っているが、私は命の親しくしていたしろぎねや才賀勝、そして仲町サーカスの人間を庇って戦わなければいけない。その事を分かっているが故に、この男は平助達を避けている。

 

「貴様、どういうつもりだ」

 

「『何故、仲間を狙わないのか』を聞きたいなら答えるぜ。オレの心情だ。どうにも戦えない人間を巻き込みたいとは思えないし、戦力確保は円満に済ませておけば離反される心配もないだろう?」

 

剣の腹をなぞって話す男の言葉に困惑しながら、袖の中に腕を戻し、引き抜いて平助に叩きつけた瞬間、緩やかな動きは元に戻り、平助の拳が鎧を身に付けた男の身体を殴り飛ばした。

 

「クイックの原液か?」

 

「知らん。平助、少し任せる」

 

「ああ、任せろ」

 

ミシリと五指を折り曲げて構える平助は普段とは隔絶した怒りの感情を纏っている。……好いた男の憤怒の感情はあまり美味とは言えない。

 

「巓を狙った理由は何だ」

 

「妖気を奪うためだ。あと才賀命の技術を此方に引き込むっていうのもあるが、流石に対策を講じているヤツが居るみたいだから」

 

「成る程、ドクトルだな」

 

「その問いは正解だぜ。全く此方は戦力集めに苦労しているって分かっている癖に邪魔するなんざ最低なヤツだ。おかげで、糸色景の力も奪い損ねた」

 

「は?」

 

コイツ、今なんと言った?私の愛した人間の力を奪うと言ったのか?この白面たる我に初めて愛と慈しみを与えた人間に、仇をなす存在ということだな?

 

───気がつけば、筆を構えていた。

 

揮毫敷奏(きごうふそう)

 

『灮』の文字を空に描き、反転させる。

 

着物を模した赤色のスーツを上半身に纏い、袴を模したズボンが下半身を覆い、『灮』の文字が仮面に変わり、黒い羽織とグローブが手を包んだ。

 

「待て、待て待て待て待て!?ありかよそれ!?」

 

「シンケンレッド、糸色巓。参る」

 

「いや、臙脂じゃねえか!?」

 

私には些細な違いだ。それよりも私の愛した糸色景を襲った貴様を許しておく必要も生かしておく必要も無くなった。確実にここで貴様を殺す!

 

「糸色の女はどうなってるんだよ、全く!こんな展開を体験できるなんざ最高に痺れるじゃないか!」

 

「巓、あとで俺も使わせてくれ!」

 

男共のバカな言葉を無視して、含牙戴角を振りかざして男の身体を斬りつけ、灰色の壁に逃げ込むヤツを追いかけようとしたが平助に止められる。

 

「お前、最後に引きずり込もうとしたな?」

 

「チッ。残念だぜ」

 

「……助かった、平助」

 

この力はあまり使いたくないのだが、な。

 

 

 




(こう)

糸色家のモヂカラ。

火へんに儿の文字を描く事で純粋な赤色のシンケンレッドではなく、深みを帯びた赤色の臙脂色のシンケンレッド(黒羽織付き)に変身できる。文字の意味は「かがやき」「ほまれ」「ありさま」を意味し、全て誰かに繋がっている。

糸色という(いのち)を授かり、(ひと)に生まれた秋葉巓にとってこの文字の意味は重く容易く誰かに見せるつもりのなかった姿でもある。


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