仲町と才賀達が其々の「壁紙ハウス」の中に移動して寝静まった夜。私は平助を部屋に招き入れて、あの変わった姿について問われていた。
確かに自分の妻になる女が変身するところなど見なければ信用することは出来なかっただろうな。しかし、この力は本家の人間を含めて使えるのは十人に満たない、いわゆる家伝家宝の類いだ。
「モヂカラとショドウフォンか」
「ああ、お前には全てを話しておいて問題ないと判断しただけだ。なにより、お前は私を愛しているだろう?それならお前に隠す必要もない」
「お、おう」
「羞恥の感情と歓喜の感情が駄々漏れだぞ。あまり不用意に押し付けないでくれ、お前の感情は少しばかり気恥ずかしく感じるときがある」
「ぐっ、悪かった…!」
そうっと目を逸らす私の態度がおかしかったのか。心臓を押さえつけるように左胸を掴み、歯を食い縛っている平助に小首を傾げる。
一体、なにをしているんだ?
「正直、俺に秘密を話して貰えるのは嬉しいし。巓の事を深く理解できるように努力していくつもりだから、せめて髪の毛はほどいてくれ」
「断る。これはマーキングというモノだ」
平助は私のモノだと伝えるには、コイツに私の匂いを染み込ませるのが一番だとヴィルマに聞いている。それに、私の髪の毛にもコイツの匂いは付く。
悪いことは何も存在していない。
なにより私に人としての恋心というものを与えた癖に奥手なコイツが悪いのだ。甘んじて、私の愛を受け取っていれば良いのだ。
「なあ、一つだけ聞いていいか?」
「なんだ?」
「アイツは何をしようとしているんだ」
「知らん。だが、アイツは私の力、糸色景の力、命の力、もしかしたら私達の血筋その物を狙っている可能性があるだろうな」
「なら、更に強くならねえとな」
そう言うと平助は髪の毛をすり抜け、部屋の外に出ていってしまった。全く、私の寝巻き姿に激しく情動を揺さぶられていた癖に、私に対する労りや慈しみの感情がそれらを上回っていた。
善い男ではある。しかし、このままでは命が先に夫婦になり、私に報告してくる可能性もあるわけだが、そんなことになれば怒りで狂うな。
「……それで、次は貴様が相手か?しろがね」
「いや、糸色家の人間と争うつもりはない。君のおかげで傷はかなり回復している。やはり糸色家の秘匿された技術は素晴らしいものばかりだ」
「その技術を狙う錬金術師もいるがな。全く、命が海外に居ると分かれば全勢力で狙う糟が、私が直々に消し炭にしてやろうか」
あれもまた私のモノだ。