しろがねの看病していた男と二人きりになっているのは、大方しろがねの願いだろう。私と話したいと言われたか、あるいは別の話かも知れないが。
「で、話とは何だ」
「ミコトの事だ。彼女はまたナルミや先生のところに戻るだろう。そうなれば彼女の力を目の当たりにする人間は増える」
「……何が言いたい」
「アシハナという男を探して欲しい。君のMon chériはアシハナと同じ黒賀の人間だ。足運び、動きの所作にアシハナと似たものを感じた」
あしはな?
……ああ、あの燃える屋敷で命の事を抱き締めて、人生を捧げさせた不埒者の事か。見つけるのは容易いが、見つけたとして使い物になるのかは不明だ。
一度逃げれば進めない。糸色の血筋は諦めずに進んでいるように見えるが、取り零した分だけ多くを拾い続けているだけに過ぎない。
「見つけてどうする?無駄足の可能性もあるぞ」
「いいや、無駄足にはならない」
「そうか。信じよう」
「僕の事を嫌っているのに信じるのかい?」
「当然だ。私は糸色巓、最も高く立つ者だ」
この名に籠められた意味を違えるつまりはない。聳える山は険しくとも進んでいける、白面の者ではなく人としての成長を願われた名と身は家族のために使う。
「流石は世界最強と名高き糸色妙の娘だ。あの強さは本当に驚嘆してしまうが、君の強さも彼女に追随しているものだと良く分かるよ」
「クク、そう簡単に私達の強さに追い付けるか?糸色景は言っていたぞ。私の進化は光より早い。全宇宙の何者も私の進化にはついて来れない、とな。どんな逆境も苦行も容易く乗り越えてやろう」
「全く頼もしい女の子達だよ。君達に好かれるアシハナと黒賀の彼も大変だろうね」
「……フン、私の愛は届いているし、私は黒賀平助という男を好いている。その事実をねじ曲げることは絶対に不可能だ。況してや貴様のように自分を偽るヤツにはな」
「その口振りだと気づいているのか?」
「少なくとも、鈍感な才賀勝や平助とは違うからな。あの女の中に『柔らかい石』はある。そして、お前の目に宿る慈しみは家族に向けるものだ」
そう言い終えると「エレオノールとのこともバレてしまったか」と男のしろがねは溜め息を吐き、どうして兄だと名乗らないのかを問えば「まだ時間じゃないんだ」と呟いて、静かに黙ってしまった。
私としてはトラックの中から盗み聞きしている奴らに気付いている癖に、わざと聞かせているコイツの腹黒さに呆れてしまう。
才賀勝の反応も気になるところだがな。