スンと鼻を鳴らす。
自動操縦に切り替えて、安定した飛行を続ける飛行機の客室にいるのは私と平助だけだ。自制しているのか、あるいは乗り物酔いで弱っている私を気遣っているのか平助は私の手を握っている。
緩やかに過ぎる時も悪くない。
そう思えるようになった心境の変化を楽しみつつ、十七年掛けて培ってきた人間の営みをより深く理解し始めている現実を喜ぶ。
だが、順番を少し間違えている気もする。
私は愛する
それも悪くないのかも知れない。が、私はどうしようもなく身の内に駆り立ててしまう、平助に愛して欲しいという情動を抑え付ける事が苦手だ。
「(平助のヤツは私がこんなに見つめているのに気付きもせず、目を瞑って意識を奥底に沈めて眠っている。触れても反応することはない)」
ほんの少しだけ詰まらないと思いながら手袋を見つめる。褥の際には外しているが、それ以外で平助が手袋を外しているところを見たことはない。
何かしら封じ込めているのか?と小首を傾げながら指を絡めるように握り合う手を見つめる。私が秘密を語らずにいるのに暴くのは駄目なのだろうが、気になるのもまた事実ではある。
「スンスンって嗅ぎすぎじゃないか?」
「……お、起きていたのか?」
「誤魔化せてねえよ」
「……お前の匂いを嗅ぐと安心するんだ。悪いか?好いた男に抱かれて眠るのが悪くなかったんだ……オイ、なんで抱き締めるんだ!」
「あぁーっ、悪い。でもな、いつも強気な巓が寂しさで俺に抱き付いてると思ったら可愛く思うのは仕方ないんだよ。俺の女は本当に可愛いなあ……」
おれのおんな?
俺のおんな、
俺の女
今、ハッキリと俺の女と言ったぞ。
成る程、成る程成る程成る程成る程成る程成る程成る程成る程成る程ッ、こういう感情だったのだな。私の愛する
「巓、どうかしたのか?」
「ほまれがいい」
「ん?」
「子を産むなら人に称賛されて欲しい。だから、私は平助との間に子を産んだら、
「お、おお、突然の告白に戸惑うぜ」
すりすりと身体を擦り付けてマーキングを行っていたそのとき、私は吐き気と気持ち悪さに襲われる。窓の外を睨み付けると人形が羽に張り付いていた。
あの塵芥にも劣る糟がッ……!