ジョージ・ラローシュと名乗った人と人形の臭いをさせる不愉快な男の話を聞けば世界を巡って偉そうに自分を崇高な存在と宣う糟共の破壊に向かうという話だ。
その中に命も加わっているそうだが、こんなゴミに混じってアイツは戦っているのかと呆れを堪えきれず、思わず私は「はあ、あの愚図は本当にどうして」と溜め息を溢してしまう。
しかし、私の成すべき事は分かった。
私は命を手助けしてガラクタを片付けてしまえば良いという事だろう。その程度の役目なら、この人の身体でも容易く行えることだ。
「ゔっ、ゔぷっ」
ガタガタと揺さぶり動く箱形の飛行機で平助に寄りかかりながら、肌寒い砂漠の夜空を飛ぶ。不自由に身体を強いるのは好きじゃない。
あの暗い海底を思い出す。百年来の友は居たが、もうヤツは先立った。この人の身に流れるヤツの血は温かく私の闇を晴らし続けている。
「全く姉妹揃って乗り物酔いか」
「ぐぷっ、従姉妹だ。間違えるな」
その胡散臭い眼鏡を叩き割ってやろうかと思いながら、ガタンと機体が傾いた瞬間、気持ち悪さが増して目尻に涙を溜めて平助に寄り掛かる。
お前以外にこの情けない姿を見せるつもりはなかったんだ。ガラクタを壊したら、コイツらも壊してまたお前と私だけの生活に戻ろう。
「巓、此方に寄れ」
「へいす────ッ、なんだこの気配は?」
千、いや、万を越える気配を感じる。
まさかと思いながらも窓の外を見ると銀色の煙が飛行機を取り囲み、歪な音を立てて機体を削り、機内に入り込もうとしているのが分かった。
「こりゃあまたぜひ…ぜひっ……ぐっ、カァッ…ぜひ…?!い、息がッ、なんでさあ…ぜひ!へ、へぇすけぜひ、ぜひ…にげろ!!…ぜひ ぜひ…ぜひ…」
「飲め。一滴なら問題ない」
「ごえっ?!」
指先をねじ込まれて嗚咽を漏らすアシハナ。しかし、しろがねの血を飲んだな。チラリと私の方を見てきたが糸色の血筋だと知っているだろう。
私はゾナハ病を発症する事は無い。平助は私と粘膜摂取というか、キスをしているから抗体は体内に残っているのだろう。
「平助、死にたくなかったらキスをしろ」
「すんごいこと言うな、お前」
「いやか?んッ…ちゅ…馬鹿者……」
ずいっと詰め寄った私の身体を抱き締め、逃げ道を塞ぐように後ろ首を掴まれ、舌を拐われ、噛まれ、私は平助と深く長くキスを交わしてしまった。
そういうことは風情を大事にしろ。
私だって、女の子なんだからな……。
「あたしら、何見せられてるんですかね?」
「黙っていろ。乙女心の芽生えだ」
「は?」