真夜中の天幕 序
ワンちゃんの後を追いかけ、私達は砂漠の何処かに設置された大きな天幕を見つめる。鳴海お兄さんとルシールおばあさん、そして私達に着いてきた梁明霞も一緒に時間を待っています。
ルシールおばあさんは突入するタイミングを見計らっているのか。静かに懐中時計を見つめて、私も同じように四次元ポケットに仕舞っていた発明品の整理と準備を再開していると鳴海お兄さんが話しかけてきた。
「命、なんで着物なんだ?」
「舞踊なら着物の方が踊りやすいんです」
「そうか。頼んでたのはあるか?」
彼の問いかけに頷いて『如意スティック』を差し出す。私と合流する前、飛行機で分かれたときに壊してしまっていたらしく二本目の『如意スティック』です。
「助かるぜ」
「壊してもまた作りますからね」
「ハハハ、そう直ぐには壊さねえよ」
そう言って笑うけれど。鳴海お兄さんはお料理系の発明品を幾つか壊しているじゃないですか、ルシールおばあさんのために作った『味見スプーン』なんて美味しさのあまり折り曲げちゃうし。
男の人は、やっぱり力が強いんでしょうか。
「敵前でよく優雅に紅茶を飲めるわね」
「敵前だからこそ平常心を保つために紅茶を楽しんでいるんじゃないか。ミコトの取り寄せた最高品質の茶葉を使っているんだ。飲んで損はないよ」
「梁さんもどうぞ」
「……一杯だけ頂くわ」
私の差し出すティーカップを受け取った梁さんはビニールシートに座り直す。レッシュさんも此方に向かっていると良いんですけど。
まだ助けて貰ったお礼も言えていませんし。阿紫花のお兄さんの居場所を知っているのは、きっとレッシュさんだけだ。黒賀の村の場所は私は知らないですから。
「……来たみたいだね」
「来たって、車なんざ見えねえぞ?」
「上だよ、ナルミ」
すうっと夜空を指差すルシールおばあさんに誘導され、空を見上げると百を越えるパラシュートが降ってくるのが見えた。こんなに「しろがね」は居たんですね。
ぞろぞろと集まってきた月光の輝きを反射する銀色の髪と瞳を持つ人形を破壊する者達に私はビックリしてしまう。みんな、すごく年老いている。
ルシールおばあさんもそうだったけど。
みんな、百歳を越えているのだろうか?と小首を傾げていたその時、私の真横にサングラスを付けた鋭利なお髭のおじ様が佇んでいた。
「ひゃあっ!?」
「アメリカのしろがねも到着だよぉ~ん!そして、ご機嫌麗しゅう御座います、糸色家の姫君。僕はしろがねOを統括する司令、フェイスレスだ」
「こ、こんばんは、才賀命です」
この人もしろがね……しろがね?
何か、違う気もする。