火炎の広がるより速く圧倒的な誰も追い付けない神速の斬撃がアルレッキーノの右腕を奪った唐倶利武者に安堵の息を吐いて、電光丸とバショー扇を帯に差して、蛮竜を手に取ろうとした刹那、地響きが聴こえてきた。
「……ドットーレも始めたか」
「まだ動けるの?!」
「いや、今の私に糸色命と唐倶利武者を害する力は残っていない。あと十分もすれば疑似体液は全て零れ、言葉を交わすことも無く私は機能を停止する」
「姫君、某は最期まで」
アルレッキーノを見つめたまま呟く唐倶利武者の言葉に頷き、私は音のする方に向かって走っていたとき、微かに空気の流れが違うところを感じる。
蛮竜の力なのか、風の流れが何となく分かる。
息切れを起こしながら通路を走っているとき、カシャッとシャッターを切る音が聴こえてきた。ツカサ君、こんなところにも来るんですね。
「……其処を退いて下さい」
そう二眼レフを構えるツカサ君に告げる。
「悪いな。此処を通すわけにはいかない」
「一体、どういうつもりですか?」
「お前の力は此処で貰う。変身」
KAMEN RIDE
DARK DECADE
バックルにカードを差し込んだ瞬間、低い機械音声が聴こえる。それと同時に無数の鎧の幻影を生み出して、一瞬にして纏うツカサ君の頭に四角い装甲が突き刺さるように装着され、青い複眼が闇の中で光り輝く。
ガチャリと重たい装甲を纏う足音を聴き、慌てて蛮竜を突きつけるように振るうも力任せに大鉾の刀身は殴り弾かれ、私の手から蛮竜が無くなる。
私の力じゃ敵わない。
「聞かせて。私の力って、何なんですか?」
「……まあ、知らずに奪うのはフェアじゃいか。まず、お前は『癒やしの力』とか言っているが、お前と糸色類の力は根本的に違う性質の能力だ。糸色類の持つ能力は正真正銘、怪我も病気も治す。正しく医者にとっちゃ夢みたいな『癒やしの力』だよ。───対して、お前の力は怪我を治す物だ」
その言葉に私は小さく頷く。
「だが、実際には違う」
「え?」
「お前の力は『癒やしの力』なんかじゃない。お前の力は『並行世界の転写』だ」
「なにを、並行世界なんてあるわけが…」
「信じる信じないは勝手だ。糸色類の力を間近で見ていたお前は『怪我の治り』という一点を無意識に選び、自分も『癒やしの力』を使えると思い込んでいただけだ」
「違う、違う、違う、私の力は…わたしの?」
ツカサ君の言葉を否定するように頭を押さえて、そう何度も譫言のように繰り返す。そんな『並行世界の転写』なんて言われても信じられない。
まだ魔法って言われた方が信じられる。
「糸色景の力に一番似ているのはお前だ。保険として何度か助けていたが、向こうを奪うよりお前から奪った方が早そうだからな」
「ヒッ…!」
「貰うぞ。お前の力を」
慌てて電光丸を構えるも刀身が砕け、バショー扇を振るうも重たい装甲を纏う彼の身体を押し退けることは出来ず、無造作に突き出された右手が私の首に触れようとしたその時、光弾がツカサ君の腕を撃ち抜いた。
「生憎、そのお宝は僕の物だよ。ツカサ」
「立ちたまえ、才賀命」
ヘルメットを被っているから顔は見えないけど、ツカサ君のバックルや鎧に似た細長い銃を構えて、私の傍まで歩いてくるのが見えた。
「…海東…大樹……!」