「かいとうだいき」と呼ばれた男の人はヘルメットを脱ぎ、ゆっくりとツカサ君の事を見据える。私の手を強く握り締める彼の大きな手に痛みを感じる。
「何故、お前が此処に居る?」
「連れないことを言うね。僕は君と同じ日にドライバーを手に入れた間柄じゃないか。況してや『糸色』というお宝を狙っているライバルでもある」
私を狙っている?
いえ、先ほどツカサ君は糸色景様の名前を出していた。つまり、この人達は時間を越える、もしくは時間を移動できる手段を持っているという事です。
もしも、それが本当なら「しろがね」になる人を助けることが出来るかも知れないけれど。私は、私には今を捨てて誰かを助ける勇気はない。
「えと、もう離して下さい」
「ツカサ、ここで君とやり合うつもりはない」
「あの?」
私の事を無視する彼らに困惑する。
そもそも私はお宝なんて言われるほど大層な人間ではないですし、誰かに頼っていなければまともに生きていくことも難しいです。
「ふざけるなよ、こそ泥がッ」
「君には言われたくないね、ツカサ!」
「ひゃあっ!?」
銃口を飛び出す光る弾丸と剣の放つ銀閃の煌めきを間近で見つめることになりながら、肩に担ぐように抱かれて慌てふためき、私は「かいとうだいき」の事を叩くも無視されてしまう。
「あまり暴れると大変だ。行きたまえ」
「は、はい!」
そう言って彼は私をバイクの影に降ろし、いきなり始まってしまった私を奪い合う争奪戦に困惑するよりも鳴海お兄さん達に合流することを選ぶ。
私の後ろから聴こえる銃撃音や斬撃音を無視して、みんなのところに向かう途中、ルシールおばあさんに雰囲気の似ているおばあさんがいた。
でも、私は鳴海お兄さん達の方に向かう。
「かいとうだいき」さんのおかげで逃げることは出来たけど。私の力はお母様と同じ『癒やしの力』じゃなくて『並行世界の転写』という物だと解った。
そして、その使い方も分かる。
私は、ツカサ君の求める力の一部だ。彼が最も欲している糸色景様の能力を得るために、私の能力はどうしても必要不可欠なのでしょう。
五分、十分近く走っているとお腹と胸の痛みが限界を迎え、咳き込み、血を吐きながらも足を動かしていると明かりが見えてきた。
「……なに、これ?」
死体。死体が転がっている。
首が、腕が、足が、胴が、人形も歯車も鋼線も色々な物が混ざり合って気持ち悪い。銀色の疑似体液を踏み進み、生暖かい感覚に身体が竦む。
それでも、私は進まないといけない。