お酒を飲む大人達に混ざって、お水を飲んでいると鳴海お兄さんとお髭のおじ様が口論を始めたかと思えばスーツ姿のおじ様と腕相撲を始めたりと変な事ばかりが起こって、なんだか不思議な気分です。
しかし、これもまた何かの仕掛けを施しているのかとフェイスレスに視線を向ける。あの人だけ、しろがねとも人間とも違う雰囲気を纏っている。
纏わり付いて離れないナニカだ。
「僕が気になるかい?」
「いえ、気になりません」
ビヨーンと顎髭を伸ばすフェイスレス。わざとふざけている、わざと笑っている、わざとらしく私の傍に近付いて何かを確かめている。
まだ糸色家や才賀家に取り入ろうとする大人の方が人間らしく思える。この人の中身は空っぽで、一つの物事に意識を繋ぎ止めているだけ。
「心臓の音が弱いね。ルシールが言ったように心臓疾患を患っているようだが、しろがねになれば多少なり延命する事は出来るだろう?」
「私の人生は私の物です。この心臓で生きていける場所まで進んでいけるところまでが、才賀命という存在の歩んだ道です。無理やり外付けの舗装された場所を歩くつもりは私にはありませんよ」
そう言うとフェイスレスは笑顔のまま固まり、ルシールおばあさんの「ホホホ、流石はミコトだね。素面のままフェイスレスを言い負かした」と笑う。
いえ、言い負かしたりなんてしていません。
私は私の生きたい人生を楽しみたいだけ。大好きな人と結婚して、子供を育てられたら万々歳です。まあ、それまで生きていられる保証はないですが。
「言うねえ、流石は糸色景の子孫だ。僕が面食らうなんて何十年振りだろうか。ウンウン、実に面白くて面白くて仕方がない」
やっぱり、フェイスレスの言葉は嘘だらけだ。
私の言葉に笑っているけど、サングラス越しに私を見つめる目は怒りと憎悪、自分の予定調和を壊された音楽家のように狂っている。
どうしようもなく苦手な人だ。
でも、もう蛮竜以外に使える武器はない。その蛮竜さえも私は満足に振るうことは────ツカサ君の話が本当なら私は無理やり使えるけれど。
その力が怖くて使えない。
ケータッチ。
まだ完成品は彼に渡していないから壊すと言えば従ってくれるかも知れない。もし、もしもツカサ君が従わなかったら、私は彼に抵抗虚しく襲われてしまう。
「ミコト、次はアンタの診察だよ」
「は、はい、すぐに行きます」
ルシールおばあさんに呼ばれ、慌てて彼女の近くに移動する途中、フェイスレスが何かを呟いたようなきもするけど。多分、気のせいですね。