医療用の簡易手術室「エッグ」という物の中に入った私はルシールおばあさんの診察を受けつつ、誰にも聴こえない場所だから静かになってしまう。
「……また心音が小さくなった」
「あ、あはは、分かります?」
「笑い事じゃないさね。ミコト、お前は自分を軽く見すぎている、もっと自分を大事に扱ってやりなさい。いつまでも無茶を続けることは出来ないよ」
「すみません。誰かが頑張っているのに私だけ何もせず安寧の場所に生きるつもりはありません。安らぎを得るには、あまりにも酷すぎますから…」
そう言って私は笑う。
この戦いが終われば大好きな人と過ごす時間を得ることが出来ますし。幸せは独り占めするものではなく、誰かと分け合えるから素敵なんです。
「景に良く似ているが、根本もそっくりだね。あの子の言葉にも不思議な力を感じるときはあったが、きっとミコトも似たところがあるんだろう」
「フフ、高祖母様と一緒なのは嬉しいです。でも私って一度も糸色家の図書館に入った記憶が無いので、ツカサ君の写真を見るまで顔も知りませんでした」
「おや、そうなのかい?」
「はい。蛮竜と家伝の極意を授かるのは一人だけで私がこの蛮竜を使えているのもこの子が手助けしてくれているからです」
トンとお腹に貼り付けている四次元ポケットを触った瞬間、ニュッと出てこようとする蛮竜を押し戻して、なにかと大変な反応を示す。
「それで、フェイスレスを毛嫌いする理由はなんだい?お前が彼処まで拒否感を出すなんて余程の事がなければ無理だろう。現にエドワルドには懐いている」
えど?ああ、お髭のおじ様ですね!と納得しながらルシールおばあさんは私の手当てを終えるなり、静かに私の事を見据えてきた。
嘘も誤魔化しも求めていない眼差しだ。
「率直に言います、あの人は敵です」
「根拠は?」
「臭いです。あの人から
「自分自身を模造した
「ゲームと同じです。フェイスレス本体はプレイヤーとして、この場所に自機を配置して遠隔操作を行っている。サングラス越しに感じた違和感もカメラです」
そう素直に思った事を告げる。どれもこれも憶測や推測にもならないこじつけばかりで、ルシールおばあさんに信じて貰える可能性はない。
「ミコト、アンタはナルミの傍に居な」
「え、信じるんですか?」
「嘘は吐けないだろう」
嘘は言いませんね、確かに。