暗くて見えない道を歩く私の手を握るリィナさんに「ありがとうございます」と伝えつつ、暗夜でも見える発明品はあることを言い出せないまま、私達は白くて広い部屋に出ることが出来た。
何も居ないですし、誰も居ない。
「ハズレを引いたのか?」
「いや、警戒はしておくべきだ」
「命、リィナさん、戦えるようにしておけよ」
「命令しないでちょうだい」
鳴海お兄さんの言葉に頷いて四次元ポケットに手を入れた瞬間、ドクンッ…!と何かがポケットの中で鳴動する音が聴こえてきた。
まさか蛮竜が何かを訴えている?
『おめでとうございます』
『あなた達は「当たり」の扉を選んだのです。そのドアの先に我らが女主・フランシーヌ様がお待ちです。ただし会えるのは「糸色命」と一人だけです』
『さあ、三人の内の誰が入りますか?』
そう私達に告げる機械音声。
三人の視線は私に注がれ、なんだか申し訳ない気持ちになりながら「命はドアの傍で待っててくれ」と鳴海お兄さんに言われてしまった。
確かに、私だけ名指しでしたから三人で話し合わなければいけないですよね。ちょっとした疎外感を感じながら、ドアの傍に寄った刹那、壁を突き破って無数の腕が壁から生えてきた。
「やッ、むぐぅっ!?」
「命ォ!?」
悲鳴を上げる間もなく手足を押さえ込まれ、壁に向かって背中を打ち付け、息苦しさと痛みに呻き声を上げる私に鳴海お兄さん達が駆け寄り始める。
『このドアを通る者のみ「糸色命」を助けて下さい』
「(く、苦しいッ)」
「テメェら、命は身体が弱いんだ!そんなにキツく絞めるんじゃねえ…!命、下手に動かずに浅く呼吸することに集中しておけよ?」
そう言って私に話し掛けてくれる鳴海お兄さんの言葉にコクリと頷きながらも、何も役立てずに捕まって襲われてばかりの自分が恥ずかしくなる。
「(せめて発明品が使えれば…)」
鳴海お兄さんなら気付いてくれる筈ですが、私を助ける方法を考えるのに必死になっているせいで、こっちを向いてくれない。
「んぐぐっ…!」
「オイ!口の手は退かせよ!」
『分かりました』
「ッハァ……!ゲホッ、ゲホッ…!」
血を含んだ咳を繰り返しながら心配そうに私を見つめる鳴海お兄さんに笑顔を向ける。大丈夫、私は平気ですから安心して下さい。
「鳴海お兄さん、私のポケットを取って下さい」
「え、あ、ああ、わかった」
恐る恐る、私のお腹に着けていた四次元ポケットを取り外した鳴海お兄さんに中身を出すように伝える。残り時間は少ないから急がないとです。