「さて、行こうか。二人とも」
「行くって、どこに」
「他のしろがねも助けるんだろう?」
「アンタ、いや、そうだな」
フェイスレスの言葉に納得して壁を破壊し、進んでいく鳴海お兄さんの後ろを着いていこうとする私の袖をワンちゃんが噛み、どこかに着いてくるように訴えているのが分かった。
鳴海お兄さんに伝えずに向かうのは申し訳無いですが、犬の嗅覚は人間の数十倍、もしかしたら怪我をしている誰かがいるのかも知れない。
そう思いながらドアとは真反対の壁に近づき、ゆっくりと壁に手を添えると反転し、私とワンちゃんは壁の中に巻き込まれるように移動してしまった。
懐中電灯を取り出して、薄暗い道を進もうとする私の手元に尻尾が触れ、私はワンちゃんに導かれるように別の道を歩いていく。
あのフェイスレスと鳴海お兄さんを二人きりにするのは不安ですけど。鳴海お兄さんがそう簡単に負けるわけがないですから安心していられます。
「ワンちゃん、何処に向かっているんですか?」
そうしろがねのワンちゃんに訊ねても鳴き声が返ってくるだけで、私の求める答えは返って来ません。やっぱり、こういうときのために、動物の言っていることが分かる発明品は必要でしたね。
「…………何だか焦げ臭いですね」
懐中電灯で目の前を照らすとバイクに乗っていたお兄さんが笑顔で立っていました。サッと懐中電灯を逸らして、また向けると近付いてきていた。
グルグルと唸るワンちゃんの声にビックリして、そっちに視線を向けたその時、私の左手首を軽く握られてしまい、「かいとうだいき」さんが笑っていた。
「やあ、漸く見つけたよ。才賀命」
「ひっ、やめて」
「失敬だね。僕はツカサのように無理やり奪うことはしないさ。───けど、君の持つ蛮竜にはとても興味があるんだ。僕に見せてくれないか?」
「ひぃんっ…!」
暗いところもそうですが、会って間もない男の人に身体を掴まれた恐怖のほうが勝ってしまい、私はグスグスと涙を流しながら頭を横に振っていたとき、白と黒の髪の毛が天井を突き破って現れた。
「愚図め、もうすぐ高校生だろう」
「て、巓ちゃん?」
月明かりに照らされて現れた巓ちゃんにビックリしながらも空を見上げると車に乗っている阿紫花のお兄さんとラローシュさんがいた。
まさか、連れてきてくれたんですか?
「秋葉巓、君と敵対するのは止めておこう」
「消えた?」
「…………チッ。空間を移動する術か」
スンと鼻を鳴らす巓ちゃんに抱き付き、久しぶりに会えた事と怖い人から守ってくれたことにお礼を言いながら車を伝って降りてくる人達を見る。
……待って、知らない人がいます。
誰ですか、あの黒い服の人は!?