無数の
綺麗な銀色の長髪。銀色の艶やかな瞳。フランシーヌ人形に似ているように思えるけど、どこかしろがねさんの匂いを纏う人形に私は目を見開く。
「ひかえよ」
その声は、しろがねさんだった。
その声は、巓ちゃんのものだった。
二人の声質は似ていると思っていたけれど。まさか三人目の声が同じだなんて信じられなくて巓ちゃんの着物の袖を摘まんでしまう。
「声帯模写の類いだろうが。私の声を真似ているわけではないのだろうが不愉快だな」
「ホホホ。あたしからすればテンの方がアンジェリーナの声に似ているんだがね。尤も愚かな人形達は大事な女主の声を聞き間違えるようだね」
そう言うとルシールおばあさんはフランシーヌ人形ではなく、彼女の娘さん───アンジェリーナさんを模倣して作ったという懸糸傀儡に傅き、三人とも一糸乱れぬ平伏の姿勢を取っています。
今の内に破壊するべきなのでしょうが、みんなは動かずにルシールおばあさんを見つめている。
「ウヌウゥ……お、おのれぇ…!」
「ドットーレ、あたしはずうっと待っていたんだ。二百年前、あたしの家族を殺したお前をどうやって破壊してやろうかと、ずうっとね」
「フランシーヌ様が見ている前で、良くも己に恥を掻かせてくれたなァ、ルシールゥ!!」
「ホホホ。人形に恥も何も無いだろうさ。しょうのないアンタに教えてあげようかね、『フランシーヌなど、自分には何も関係ない』と思ってごらん」
ゾワリと身の毛が弥立つ恐ろしさを感じた。
ルシールおばあさんは理解してやっている。
「フン、塵を崇めて何になるのだ」
巓ちゃんは呆れたように呟く。
そうだった。
私はルシールおばあさん達にフランシーヌ人形は偽物だと伝えに来ていたのに、彼女の気迫に呑まれて見届けることを選んでいた。
「ルシールッ、ルシールウゥ……!!フランシーヌ様、ドットーレは怒りでおかしくなりそうです!!どうか動けとご命令をォォ……!!!」
そう懇願するドットーレの叫び声は聴こえている筈なのに、フランシーヌ人形は動かず、静寂の中で優雅に私達を見下ろしているだけです。