パンタローネとコロンビーヌの相手をしてくれる鳴海お兄さんと黒賀平助のおかげで私達はフランシーヌ人形に繋がる階段まで辿り着くことが出来た。
巓ちゃんの言っていた「フランシーヌ人形は既に破壊されている」という話が本当なら、今も尚、私達を見下ろしているあのしろがねさんに酷似した人形は、本当に何者なのだろうか。
不安と恐怖を抱きながらも階段を上がる。
階段の半分まで登り掛けていた刹那、階段が溶けるように崩壊していく。誰の仕業だと焦りながら振り返るも混戦状態で此方に向かってきているのはパンタローネとコロンビーヌだけ。
しかも、その二人は強い人達に足止めを受けている。
「(やっぱり真夜中のサーカスを操っているのは、あのフランシーヌ人形じゃなくて別の存在だ。巓ちゃんも気付いているけど、場所までは把握できていない)」
「チッ。不愉快な視線だ」
不満そうに呟く巓たゃんよ髪の毛の半分が黒く染まり、壊れた階段を軽く飛び越える。私は蛮竜に引き上げて貰い、巓ちゃんの傍に立つ。
ゆっくりと歩んでいき、フランシーヌ人形の眼前に辿り着く。───けれど。私にもハッキリと彼女が偽物だと分かってしまった。
この人形には覇気や圧迫感を感じない。
「御初に御目に掛かる、人間」
「命、お前が話せ」
「えぇ、分かっています。初めまして、私は才賀命と言います。貴女を壊す前に幾つか話を聞いても構いませんか?」
「その質問は肯定します。先ず、貴女に謝罪をしましょう。私はフランシーヌ様に造られた。虚偽を語るなど出来ぬ機巧の身、なんなりと」
そう言って私を見上げるフランシーヌ人形の声も顔も私の大切な家族にそっくりで胸の奥が苦しくなる。だけど、絶対に聞かなければいけない。
「本物は何処に居ます」
「フランシーヌ様の行き先は知りません。ですが、この歯車を頼りに探すと言っていました」
差し出された歯車には『才賀アンジェリーナ』の名前が刻まれ、まさかという不安に自分の身体を抱き締める。私は生まれるように仕組まれた?
そんな恐ろしく怖いことを考えてしまう。
けれど。お父様とお母様は真に愛し合い、私の事を大切に思ってくれている。そんな馬鹿げた事は絶対に有り得ないと断言できる。
「私の最期はしろがねではなく、貴女達なのですね。ようやく、終わることが出来ます」
「え?」
私が困惑の声を漏らした瞬間、巓ちゃんがフランシーヌ人形の頭を切り落としてしまった。静かに憐憫の感情ではなく嫌悪の眼差しのままに────。
人形達の悲痛な叫び声、しろがねの喝采、全てが遠くから聴こえるようで、この秘密を知ってしまった悲しみと後悔に身体が震える。