「うぅ、また、飛行機に乗るんですね」
「船は倍掛かるからな」
トランクケースを渡して、私と鳴海お兄さんは検査を受けずに飛行機の搭乗口に移動する。正直、私の発明品『どこでもドア』を使えば簡単に戻ることは出来るんですが、なぜか
謎の生物やロボット、怪人みたいなのも見えますし。そういう謎の場所には行きたくないです。だって怖いですし、まだ鳴海お兄さんも本調子じゃない。
「阿紫花と一緒に行かなくて本当に良いのか」
「えぇ、会えない時間がより愛を強くしますし。糸色景様も『二兎を追う者は二兎とも取れ』と言っていますから、どちらも大切なんです♪︎」
それに鳴海お兄さんを独りにしていたら、外道に堕ちてしまうかも知れない。それだけは絶対にダメです、彼は私の義兄になるかも知れませんからね。
「手荷物はあるか?」
「お願いします」
棚に置いて貰い、私は安全用の酸素マスクを身に付けます。あまり期待はしていないものの、安心感を得ることは出来る。
乗り物酔いと病気さえなければもっと自由に動けるんですが、無い物ねだりも甚だしい。どうせ、もうすぐ死ぬんですから……。
恋もして、キスもした。
もう思い残すことはありませんね。確かに自分の子供を抱っこしてみたいという願望はあるけど。この身体じゃ子供を育てることは難しい。
「命、顔色がヤバいぞッ」
「な、なれてます、ゔっ」
そう言って笑う私に鳴海お兄さんは呆れながらも優しく手を差し出してくれた。私は鳴海お兄さんの手を握り締めて、離陸する飛行機の揺れに耐える。
これぐらい平気です……ゔぇっ。
「どうして、そんなに酔うんだろうな」
「……た、体質的な問題なので……」
お母様も乗り物酔いをしますし、遺伝しやすいとしか言葉は見つかりませんし、本当にどうしてなんでしょうか?と私は小首を傾げる。
しかし、十年以上もこの体質と過ごしていますから慣れてはいるんです。確かに、気分は悪くて辛い気持ちになることばかりですけど。
それでも動けるんです。
せめて誰かの役に立ちたい。
「鳴海お兄さんは、なにか思い出しましたか?」
「……いや、まだ思い出せてねえ。少なくとも、お前の言うしろがねのこともマサルってヤツの事も思い出したくても頭が痛みやがる」
「そう、ですか」
やっぱり、まだ思い出せていない。
それとも思い出したくないのか。鳴海お兄さんにしか分からないことだから、あまり強く言えないことですし。なにより、会えば分かることです。