数週間ぶりに仲町のところにやって来たが、随分と人数が増えているように感じる。やはり、才賀勝は人を惹き付ける才能を有している。
「テン、帰ってきたのか!」
「吠えるな。聞こえている」
「す、すまない」
「まあ、お前の心配は分かっているつもりだ。少なくとも命は無事だ。それから、加藤鳴海というお前が好意を寄せている男も無事だったぞ」
私がそう告げた瞬間、一輪車の練習に励んでいた才賀勝が此方を大きく目を見開き、見詰めているのが見えた。そういえばアイツも加藤鳴海に執心していたか。
しかし、私には無関係の出来事だ。
「ど、どこにいるの!?ナルミ兄ちゃんはっ」
「テンッ、教えて欲しい!どこにナルミは!」
「……囀ずるな。いずれお前達の目の前に現れるとは思うが、あの男は記憶を失っている。お前達を忘れている可能性もあることは覚えておけ」
誤魔化さずに告げる私にしろがねの男が溜め息を吐いて、頭を押さえるが私は嘘を吐くつもりはない。なにより先に知っておけば安心も出来る。
愛を貫けば人は変わる。
少なくとも、
しろがねと才賀勝は加藤鳴海の記憶喪失と生存確認による二つの衝撃を受け止めるために喜びと悲しみを同時に発露している。平助がいれば怒っていたところだ。
「で、どうするつもりなんだい?」
「不躾な質問だが、待てば良いだけだ」
私の解答に悩む男のしろがね。
お前の思考は読みにくいが、基本的に考えているのは「約束は守る」という意志だけ。本当にしろがねという存在は面倒な奴らばかりだ。
「ナルミは元気そうだったか」
「命が傍に付いている。自暴自棄になることはないだろうが、あの男は修羅に堕ちるぞ。戦うことだけに生きる屍、終わりを迎えてもとまることはない」
「……シュラ、仏教の六道だったか?」
「近しいものだ。お前達が知っているかは知らないが、日本には魑魅魍魎の類いが多く存在する。当然、人から堕ちるものも居るほどに、な」
もしも命が死ねば今度こそ加藤鳴海は堕ちる。平助を上回る拳法家が敵となれば、私の愛する
尤も加藤鳴海では彼女には勝てない。
搭載するエンジンが違いすぎるのだ。
一度、
……あのとき、頭に受けた痛みは忘れられないな。
「ん?その指輪は……」
「ああ、先日平助と結婚した」
「……まだ17歳だと聞いていたが?」
「愛に年齢は関係ない」
そういうものだろう?