しろがねとリーゼと話していたとき、騒々しく喚き散らす不愉快な声が聴こえてきた。まさか、また何かあったのか?とトラックの荷台を降りた瞬間、カメラを構えた男達がヴィルマに追われていた。
「ぐえっ!?」
「糟が、私の足に触れたな」
「い、いや、今のは君が……い、糸色妙?」
「気安く名を呼ぶな、蛆虫が」
私の愛する
そう思っていると才賀勝から強い後悔と懺悔、罪悪感を感じ取ってしまった。なにか言われたのかと思案するよりも先にダイレクトに才賀勝の感情が叩き込まれる。
「……そうか。お前は悲しいのか」
───ならば、憂いを断つのが一番だ。
「このサーカスのスポンサーは糸色家だ。貴様らのような者が立ち入って只で済むと思っているわけではないだろうな?死ねば楽になるなど在りはしない」
「わ、我々には報道する権利というものが」
「高々子供のお小遣いが増えた程度の事だろう?そんなに金がないのか、貴様ら」
「……あ、アンタ、糸色ってそうだ!秋葉巓だろ!?ニュートンアップル女学院高等部首席入学、一年で生徒会長を務めていた世界最強の女子高生だ!」
「コイツ、詳しいな」やら「なんでテンちゃんの女学院の名前まで?」やら言葉が聴こえ、だんだんと背中に感じる侮蔑や軽蔑の感情は実に心地好く思える。
しかし、確かに私の事を知りすぎている。
色々と可能性を考えていたその時、あることを思い出した。特徴的な顎をしているおかげで思い出すことが出来たと言うべきなのか。
「貴様、私の仕合を記事にしていた男か」
「は、はい」
「よし。連れていけ」
私の言葉に控えていた黒衣を纏った集団──時代劇に登場する忍者がカメラマンと男を連れ去った。私の実力を不正扱いしていた記者だったことは、今でも私はしっかりと覚えている。
非常に不愉快だった。
只の木っ端ごときに私が不正をする?斯様な戯れ言を言うだけ言い、手のひらを返して逃げていった事は今でも覚えているぞ。
故に、私は手加減せずに潰す。
「全く鎹を守らず、どうするというのだ」
「て、テンさん、ありがとう」
「気にするな。私も不愉快だっただけだ。それに悔いるより素直に認めて話すのも良いことだと私は学んでいる、お前も歩むならそちらにしておけ」
少なくとも、加藤鳴海を人道に引き戻せるのは才賀勝としろがねの二人だ。どちらが欠けてもアイツを救うことは絶対に出来なくなる。