あのカメラマンと男の言葉を気にしてしまったのか。それとも別の要因かは不明だが、才賀勝は消えた。匂いはそこまで遠くには行っていないものの、やはり男のしろがねの策略と考えるべきだ。
全く私は子守りでも母親でも無いんだが、まだ肌寒い時期に小学生だけで歩き回るというのは些か不自由を強いることになるだろう。
「才賀、一人で行くつもりか?」
「わああああっ!!?」
「……囀ずるな。耳が痛い」
ズキズキと痛む頭を押さえながら才賀勝を見下ろす。全く男のしろがねに何を言われたのかは知らないが、お前の生きたいように生きれば良いことだ。
他者の言葉で揺らぐ脆弱な人生を楽しめない人間に生きる価値は存在しない。もっとも私は人を喰らい、人を欺き、人を貶める存在だったけれど。
「なんで、いるの?」
「
しかし、男のしろがねの思惑が分からん。
「で、どこに向かっている?」
「ぼくの、お兄さんの屋敷だよ」
「……嗚呼、あの屋敷の事か」
自分の弟を殺そうとする理由が巨万の金を得るためとは何とも下らない。人の身に産まれたことだけでも幸福だというのに、何故金を求めるのだ?
こんなことを才賀勝に問うたところで無意味だが、少し腑に落ちないことばかりだ。まるで、才賀勝を中心に物事を揃えようとしているように感じる。
「テンさんもありがとう」
「童は童らしくしておけ」
「うん。へへ…」
クシャリと頭を撫でてやると才賀勝は長細い洋菓子……確か、そうチューインガムというものを食べ始めた。歩きながら食べるのは悪いことだぞ?
スンと鼻を鳴らす。
微かに命の匂いが残っているチューインガムに視線を向けると「これね。ミコトさんがぼくに作ってくれたんだ。シャラガムっていう、がむしゃらに頑張れるお菓子なんだってさ」と嬉しそうに笑う。
シャラガム。
そういう道具もあるのかと小首を傾げながら、袖の中に手を入れて大百科を取り出す。この第三巻と書かれたものには乗っていないか。
しかし、才賀勝は折れないな。
この年頃の童は騒々しく喚くものだと記憶している。いや、よく考えれば命も病室に一人だけで留まり、黙して過ごすことが多かったか。
「(出会った頃の糸色景もそうだったが糸色の血筋は肉体強度の触れ幅が大きい。私は妖気を纏う分、補正を受けているが異能に秀でた物は童に劣る場合がある)」
とくに命や糸色景はそうだろう。