「才賀、此処から先はお前だけで行け」
「え!?」
「親子間に立ち入る事は出来ない。それに此方を見詰めているヤツが何人かいる、お前の事をまだ狙っている兄弟かも知れないからな」
「……わかった」
私の言葉に頷いた才賀勝は階段を降り、鉄扉の向こうに向かっていった。才賀勝が居なくなると同時に現れたのは意外な事に黒賀の人間だった。
いや、才賀家と黒賀家は綿密な関係だと平助に聴いていた記憶もある。だが、どれもこれも私を怪しみ、警戒する眼差しに舌打ちをする。
「────オイ。腹立たしい視線を向けるな。私は糸色巓、貴様等の警戒する才賀貞義とは無関係の存在だ。何より私の夫は黒賀平助という名前だ」
そう告げると困惑していた男達のひとりが携帯電話を取り出して何処かに連絡を取り始めた。いや、どこに掛けているのかは聴こえている。
成る程、才賀正二は生きているのか。
こうも思考を丸出しにされてしまうと読む気が無くても読んでしまう。もっと隠すように心掛けて貰わねば全て見えてしまうということが分からないのか?
「申し訳御座いません。正二様の盟友・糸色家の方とは知らずに御無礼をしてしまいました」
素早く足元に傅く男達を制する。
私は傅けとは言っていない。
「構わない。だが、一つだけお前達に言うとしたら才賀勝は才賀貞義とは無関係だ。……いや、違うな。少なくともアレは貞義ではない」
「ッ、分かるのですか?」
「さてな」
そこまで語るつもりはない。
───だが、凡その事は頭の中に思い浮かべた時点で私に筒抜けになる。しかし、記憶と人格をダウンロードするというのは些か強引だ。
そも記憶を継承するならば私のように魂を赤子のときに宿して貰い、自我の芽生えをもう一度体験することが必要になるのだが、どうやって記憶を植え付ける。
少しばかり興味が出てきた。
「て、テンさん、ぼく、どうしたら…!」
「止まれ」
「え?」
僅かに臭いが傾いた。才賀貞義のものだ。
どういうことだ?まだ私の知らない技術を残していたと考えるのが妥当だ。しかし、才賀勝と才賀貞義の臭いが混ざり始めている。
「やい!オレの
「からくりの鳥?」
いや、手が生えている。
「才賀貞義ッ、ここで貴様を討つ!」
「なに?ちがっ、違うよ!!」
逸る男を止めようとしたその時、イヤな気配が男から発せられるのを感じ取った。自分の新しい身体を取り戻しにやって来たというわけか。
なんとも気持ちの悪いヤツだ。