私の制止も聴かずに才賀勝を攻める男達の首を髪の毛で締め上げ、押さえ付けようとした刹那、左腕の関節が触れられただけで外された。
まるで命のやっていた『分解』に似たように思えるが、アイツの攻撃は一瞬の内に全ての部品を分解するというものだったが、コイツのはイビツに外して破壊しようとしているのだと直ぐに分かる。
「……フン。こんなもの付ければ良いだけだ」
ガコンと関節を嵌め直す。コキ、コキ、と関節のズレを調整していると筋骨隆々な人形を動かす才賀勝が現れ、慌ただしく男達を攻撃していく。
成る程、命の惚れた男も似た物を使っていたが、それなりに使えるものらしい。そう考えながら飛んできた鳥を捕まえる。スンと鼻を鳴らしながら臭いを嗅ぐ。
やっぱり似た臭いがする。
「テンさん、そこ退いてぇ!!」
「こうか?」
半身を後ろにずらしてカボチャに乗って空を飛ぶ才賀勝を躱す。すると、童は絶叫を発しながら空に飛び上がっていくのが見えた。
なんとも不思議な光景だ。
しかし、アイツの道はそちらか。
「急げ!まだ追い付ける筈だ!」
そう言って駆け出す黒賀の男達。
「平助に伝えておけ。私は黒賀に向かう」
「はっ。巓様、お気を付け下さい」
「問題ない。私は糸色巓だ」
ゆっくりと身体を引き伸ばして、コキリとズレていた背骨の関節を戻す。すれ違いざまに外されそうになったが、臭いは覚えた。
次は逃がさずに絞め殺す。
しかし、随分と不意打ちをしてくれたものだ。
黒賀の男達を追い掛けていると投網に掛かった才賀勝を見つけ、私の存在に気づいた一人が警戒しながらも車に同乗することを許可した。
「怪しい動きをすれば斬るぞ」
「囀ずるな。車に乗れば私は酔う」
「は?」
静かに動き始めた車の揺れに顔色を悪くし、吐きそうになるのを堪える私に何とも言えない視線を向ける男達に「乙女の弱ったところをジロジロと見るな」と告げ、窓の外を静かに見詰める。
最悪の気分だ。
敵の臭いが満ちている中で無防備に隙を晒している。こんなところを見せるのは平助だけと決めていたんだが、どうやらそうも言っていられない状況の様だ。
「だ、大丈夫なのか?」
「うるさい。騒ぐな…」
コツンと窓に頭を当てて振動が起こる。ああ、ほんとうに不愉快で不快で気持ち悪い。……しかし、どうやって敵を倒すかだが、今の私では無理だな。
せめて広い場所。
髪の毛を自由に使える場所であれば、車を運転している男を倒せるのだが、この距離では絶対に首を折られるだろうな。