「チィッ!」
フェイスレスは左腕を金槌に変えて、才賀正二の振るう刀と斬り結ぶ。歪な金属音を聴きつつ、私は向かってガラクタを握りつぶす。
「才賀、お前も戦えるだろう」
「えっ、む、むりだよ!?」
「あのガムを噛めば問題ない」
私の言葉にビックリしたように目を見開き、恐る恐るズボンのポケットに手を差し込んだ才賀勝は残り五枚のチューインガムの包装を剥がし、口に含んだ。
勇気を出すキッカケは転がっている。当然、私は勇気など抱かず、在るがままで戦えるから大して困ったことは一度もないがな。
「使い方は分かるな?」
「うん!」
才賀正二の身体の一部を溶かした「
しかし、子供の身体で使えるのは難しい。
「行け、死角は庇ってやる」
「ありがとう!」
「おのれッ、行かせるものか!!」
ガラクタ達が騒々しく暴れ、私の髪の毛を切り裂こうとするがもう私の髪は斬ることは出来ないぞ。髪の毛に込める妖気を増やした分、髪の毛の強度は増している。
「死ねぇ!!」
「醜く焼け爛れろ!!」
「クク、僻み嫉みばかりだな。二百年程度生きただけで悔いるのなら死ねば良かったんだ。それとも死にたくなかったのに、戦わされて恐怖しているのか?」
「だまれ!だまれええぇぇっ!!」
全く下らん価値観だ。
老いることに恐怖する必要が何処にある。老いることは悪ではなく人生の研鑽だ。少なくとも私の知り得る限り、老いて弱くなったヤツはいない。
いや、何人か老いる自分に絶望して妖怪を寄せ集めて作った塵に懇願していた人身御供がいたな。あれは自分の行為を悔いて壊れただけだが。
「戦いの最中に考え事か!」
「テンさんに手を出すな!」
「しっかりと刀は振れているな」
私を狙っていた男の前に構えた才賀勝は一撃でガラクタの身体を真っ向両断し、私の手を掴んで部屋の外に向かう。確かに大広間では溶解液を持つフェイスレスの優位性は崩すことは出来ない。
「平助、手助けはいるか?」
「要らん!俺の敵討ちだ!!」
「クク、良い気迫だな」
「僕を出汁にイチャイチャしないでくれ!」
負けて尚も立ち上がる男は嫌いじゃない。況してや私に愛を教えた男なのだから、嫌いになるわけがない。本当に面白く愉快な男だ。
しかし、その負の感情を私に向けて放ってほしいものだ。劣情や恋慕の感情は好ましいが、たまにはお前の怒りの感情を喰らいたいものだ。