「全く嫌になるね。いつもいつも!」
そう言うとフェイスレスは生き残ったガラクタを引き連れて逃げていった。才賀正二も十分という限界時間を越えて尚も戦った反動を受け、床に膝を突き、身体が銀色の石に変わり始めている。
私は、此処に居るべきではないな。
命の大事な祖父の最期を見とるべきなのだろうが、私には彼を看取る権利は存在していない。平助の手を引き、大広間を出る。
「平助、内臓を傷付けたな?」
「……流石、よく見てるな」
「命ほど凄いものではないが、私にも治癒は使える」
緑豊かな絶景の見える縁側に腰掛け、ポンポンと太股を軽く叩いて平助を招く。照れ臭そうに平助は私の太股に頭を乗せ、私は左手に妖気を集め、平助の身体へと循環するように力を委ねる。
内臓を包み込んで保護してやる。骨子のひび割れは欠片を集めて圧縮し、肉体内部を修繕していく。全くフェイスレス相手に私を頼らないからだ。
いや、そも男とは頑固で意地っ張りだったな。
クスリと笑って、目を瞑る平助に顔を寄せる。
「今夜は私の事をお前の好きにしていいぞ♥」
ポソリ、と。
私がそう言った次の瞬間、物凄く獣欲に溢れた目が私の事を射貫く。全く男という生き物は単純で面白いものだ。いや、相楽左之助も
しかし、悶々とした感情だな。
そういうところもまた愛しく感じる。
「平助、次は勝てるか?」
「勝つ。巓は何度も見てるだろ?」
平助の手袋に隠された左右の手。
その両手の指を合わせて十指全てが酷く損傷し、繊細な動きなど出来ないように砕かれ、完治しても元通りにはならなかった。
その原因はフェイスレスであり才賀貞義だ。
数奇な運命とはよく聴く言葉だが、平助も糸色も面白いほどに巻き込まれている。そういう運命なのならば何とも面倒で退屈しないことだ。
「巓は俺に着いてきてくれるか?」
「クク、愚か者め。お前が私に着いてくるんだ」
そう言って平助の頭を撫でてやる。私にこんなことをさせるのはお前だけだぞ。まあ、糸色景や愛する
「ああ、くそ。俺の嫁が可愛すぎる」
「そうか?」
あまりそういうことは言われないが、母親似で美人だと言われることは多い。やはり、糸色家の人間は外側内側のどちらでも他人を惹き付けるようだ。
「それで、そろそろ追いかけるか?」
「いや、先ずは英良の兄貴に話をしとく。あの人はまた酒に漬かってるみたいだからな」
命は、本当にアレのどこがいいんだ?