才賀勝としろがねの会話を聴いていた私は面倒臭いという気持ちしか沸いてこなかった。相手の事を大切に思うのは勝手だが、本心を話さずに遠ざける事は愛ではなく愛の押し付けに等しい。
尤も私に愛と恋を教えた男は鍛練をすると言い残して、どこかに行ってしまった。いや、何処に居るのかは見当はついているが、話しにはいかない。
こういうのを信じる愛と言うのだろう。
「テン、私はどうすればいい?」
「知らん。……だが、少なくとも才賀勝が無理に笑顔を作っていた事だけは覚えておけ。それに加藤鳴海を出迎えるのはお前の役目だろう?」
「そう、だが……」
「悩め。いずれ答えは出る」
そう言って私は風に混じり届く命の匂いと、加藤鳴海の死を纏った気配に小首を傾げた。金属の臭いが増している、手足の動きも鈍く重い。
やはり、義足と義手になったか。
無駄に血を多く流しているように感じていたが、加藤鳴海は相当な馬鹿だな。命が心配して着いていくのも頷ける。しかし、あんなものを相手させるな。
「……さっきから気になっているのだが、テンの周りを飛んでいる目玉はなんだ?」
「婢妖。まあ、使い魔だ」
一本しか残っていない尾を変質させて、幾つかに能力を使い分けることは出来る。偵察や情報収集には婢妖のように小回りの利くものが適任だ。
────とは言えだ。
この近くにもう
しかし、人形作りを出来るのは命だけだ。
真夜中のサーカスなんていうごみ溜めで糸色家の機巧人形を多く失ったのは痛手……あのふざけた武者人形は残っているが、命のポケットに収まっている。
スンと鼻を鳴らす。
「羽虫か?」
「はむ、しか?」
私の呟きに首を傾げるしろがねの背後に純白の背広を身に纏い、黄金の羽根を揺らす男が現れる。ドクトル・バタフライ、糸色景の親しい友人であり私に彼女の遺品を幾つか渡してきた相手でもある。
この四次元に繋がる着物の持ち主は糸色景だ。
「巓君、随分と丸くなったようだね」
「体型は変わっていない」
「いや、性格の話だよ。それと会うのは初めてになるが宜しく頼むよ、エレオノール」
「……テン、コイツは何者だ」
「変態」
そう言うとしろがねは警戒したように構える。人形遣いのお前が人形もなく羽虫に勝てるわけがないだろう。少なくともフェイスレスより格上の相手だ。
まあ、私より羽虫は糟みたいに弱いがな。