才賀勝に懸糸傀儡の操作法を教える男のしろがね。ギイ・クリストフ・レッシュの思案を探るつもりはないが、学校の帰りに黒賀の里に私は足を運び、平助の様子を確認している。
鍛練。鍛練。鍛練─────。
愚直に身体を鍛え上げる平助の事を見つめる日々を過ごす。虎の爪を模した双拳は樹木を抉り、岩石を穿つ。蹴りは大気を裂き、大地を砕く。
うっとりと見惚れてしまうほどに美しく隆起した背筋は巌の如く盛り上がり、胸筋や前鋸筋、腹直筋は陰影を作るほどに硬く頑強な鎧と化している。
「カハァーーーッ」
ゆっくりと練り上げた力を呼気と共に全身に送り込み、鋭く強く虎の爪は全面にそびえ立つ岩盤を貫く。貫く。貫く。貫く。貫く。虎の爪は蛇の
平助の鍛え上げた拳打の強さで言えば相楽左之助や悠久山の和尚に迫るだろう。しかし、あくまで人間の範疇に於ける強さを基準にした場合だ。
あの拳による攻撃は脅威だ。
ガラクタでさえ行動を起こすより真っ先に学習することを優先し、平助の動きを見つめていた。尤もその強さは平助という人間だからこそ持つことの出来るものだ。
「……っと、来てたのか」
「ああ、弁当を持ってきてやったぞ」
そう言って私は女学院の家庭科室を借りて作った手料理を詰めた三段重箱をビニールシートの上に置き、シートの四方に硬質化させた髪の毛を突き刺す。
革靴を脱いでスカートが捲れないように座る私にチラチラと視線を向ける平助。そういえばコイツと会うときは、いつも着物だったからな。
「一応、下段はお結びにしてみた」
水筒に収めていたお味噌汁を平助に差し出す最中、スンと鼻を鳴らして後ろに向かって髪の毛を伸ばすとアシハナに似た臭いの童がいた。
「離せコラ!ババア!!」
「平馬、お前なんで?」
「ヘイスケんとこに知らないヤツが行くから見張ってただけだっての!!」
「あ、あー、そうか」
ギャーギャーと喚くアシハナに似た童を見る。
平助の知り合いなら離しても良いが、チラリと平助に目配せする。
「巓、ソイツは阿紫花平馬。俺の平助の平に、馬って書いて平馬だ。敵じゃないから離したやってくれないか?それと平馬にも紹介する」
ストンと地面に降ろした瞬間、私を睨み付ける童を無視して平助は私の肩を抱いた。
「俺の嫁さんになった秋葉巓さんだ」
「よめさん?え、いや、セーラー服着てるぞ?」
「当たり前だろう。私は17歳だからな」
「えっ、ヘイスケが女子高生と?」
そういう反応を見るのは珍しいな。