「ヘイスケのよめさん……」
「おう」
「高校生とオッサンが?」
「オッサンなのは否定しない」
そう言って話す阿紫花平馬と平助の会話を聞きつつ、仕方ないから童にも弁当を食べる権利を与える。糸色景曰く「食事は一期一会、毎回毎回を大事にしなさい」ということらしいからな。
シャガクシャのおかげで不愉快な食事をすることもあるが、アイツの私に対する憎しみを考えれば妥当だ。しかし、毎度毎度私の家庭菜園を食い荒らすのは自分の子供の教育にも悪いだろう。
真由子は止めないのか。
いや、言って止まる妖怪ではないか。
「玉子うまっ!?」
「全く急かずに食べろ」
「俺の分まで食うなよ?」
ティッシュを取り出して口許の米粒や玉子のカスを拭き取ってやり、カバンの中に仕舞っていたスペアポケットに手を入れ、お味噌汁用のマグカップを取り出す。
「ネーチャン、マジで嫁なのか」
「指輪も貰っているぞ」
カチャリと紐を通して首飾りのように身に付けている指輪を平馬に見せてやると「おお、そんな甲斐性がヘイスケにもあったんだな」なんて呟いている。
まあ、その反応も否定はしない。
「唐揚げッ!!」
バクバクと弁当を食べ進める平馬の箸を箸で阻止し、ガチガチと箸同士をぶつけ合い、無益な攻防を始める馬鹿者達を見て、クツクツと笑ってしまう。
よもや食事を奪い合うために、ここまで醜く争うとは想像もしていなかった。たまに
「オレの唐揚げがああああああっ!!!」
「待て、コイツは俺の愛妻弁当だ」
愛妻弁当。
なんとも甘美な言葉だ。しかし、私を置いて鍛練を続けるお前に適した食事を考案しているのは愛する
私は学んだものを押し込めているに過ぎない。
「巓、美味しかった。御馳走様」
「ネーチャン、ごっそさま!ヘイスケ、オレにも拳法教えてくれよな!」
「俺の鍛練なんだがなぁ?」
困ったように笑う平助と、そんな男の周りで騒ぐ童を無性に妬ましく思う。ここ数日ほど我の意志に反して、私の内に潜んでいる嫉妬心が肥えている。
ソイツは、私の男だと伝えたい。
「(全く私もこの半年で人に染まってきた。いや、勝手に線引きしていた場所を簡単に踏み越えて、私の意識を独り占めする男のせいだな)」
私をこんな身体に変えたんだ。
しっかりと責任を取った上で、糸色景や糸色妙の様な暖かさと安らぎに包まれた家庭を築こう。一先ず、目標としては十人ほど子を産みたい。