そこそこ大きな武家屋敷。
黒賀平助の生まれた屋敷に入り、玄関を通って廊下を歩くも人の気配は感じず、小首を傾げる私に「ウチは俺一人だけだよ、ほとんどゾナハ病で死んだ」と言われ、思わず目を見開いてしまった。
いや、あの男の事だ。今後の不安要素を排除するために完全に平助を狙っていたのだろう。少なくとも人形遣いだった頃の平助ならば私に勝つ可能性はある。
「……しかし、男の家に来たのは初めてだな」
ポツリと思ったことを呟くと平助は歩みを止め、私の方に振り返ってきた。なんだ?と問えば「いや、俺ん家に女子高生がいるのかと思ったら犯罪っぽく思えてきた」なんて阿呆な事を言い始める。
そも大前提から間違っているのだ。
「お前は私の夫だろう?」
「お、おう、そうだったな」
今更照れている平助の反応が愛らしく、クツクツと口許を押さえるように笑ってしまう。しかし、それが恥ずかしかったのか平助は不満そうだ。
その顔が愛らしく可愛らしく見えて、背伸びをするように手を伸ばして彼の頭をワシャワシャと撫でてやる。少し困ったように笑い、平助は動かなくなる。
「全く大の男がだらしないぞ?」
「悪い。もう少しだけ、こうさせてくれ」
そう私の胸に顔を
私は弱くても愛しく想うぞ。
「……悪い、手間取らせた」
「何だ。もっと堪能しても良いのに止めてしまうのか?男は皆、女の胸が好きだと羽虫が言っていたぞ。特に平助は人一倍好きだと」
「ドクトル、ブッ殺す!!」
クク、本当に平助は面白くて良い男だ。
「さて、おふざけは此処までとしよう。平助、あのガラクタ共が逃げた飛行船だが行方を眩ませているらしい。が、羽虫も捜索に加わると聞いた」
「それでも許せん」
「……全く慰めてやるから来い」
襖を開けて居間に入り、正座をする。
私の後をついてきた平助は無言のまま頭を私の膝に乗せ、静かに外の景色を眺めている。こういうときは落ち着くことが大事だ。
怒りに任せて動けば、シャガクシャに良いように力で負けることもなかったのかも知れない。いや、それは単なる後出しの結果だな。
そう思いながら私は平助の頭を優しく撫でてやる。糸色景もよくこうしているところを見たことがあるが、存外悪くないものである。
しかし、平助の髪は意外と跳ねるな。私の愛する