才賀勝の世話になっているアシハナの家に赴き、バカみたいに稽古を繰り返している才賀勝とギイの二人を見据えながら等身大(180cm)サイズの「ころばし屋」という発明品に硬貨を与える。
「あの童を倒せ」
そう言うと寸胴のごとき身体のころばし屋は笑って炮烙……今は銃とと呼ばれる兵器の先を模した筒を右腕に嵌め、ボフン!と不可視の攻撃を繰り出す。
───だが、空気弾は才賀勝にもギイに当たることもなく人形の振るった湾曲した剣に裂かれた。ここ数週間の内に大気の流れを読む力を身に付けたのか。
いや、加藤鳴海の影響だろうな。
「テン、いきなり物騒な挨拶だな」
「お前達の稽古を見ていると退屈に思えるだけだ。命の作った機巧人形の一体だ。武者の方は依然として行方知れずだが、アレは一点物だからな」
「テンさん、まさか」
「往け」
私の言葉を稽古開始の合図として空気弾を撃つころばし屋。ギイは流れ弾を恐れ、私の傍に移動して才賀勝の実践稽古を観察している。
既にコイツも気付いているだろうが、才賀勝の知能は羽虫並みに高い。いや、フェイスレスの頭脳を丸ごとダウンロード出来る『器』を有しているのだ。
しかし、本当に不愉快な糟だ。
「テン、お前も気付いているだろうが三人だ」
「問題ない。相手は人からガラクタになっただけで超人を自称する憐れな糟共だ。私の事を護衛していた
「SHINOBI……NINJA……」
「なんだ、見たことないのか?」
「いや、糸色家は要人警護の仕事を請け負う分家も居ると聞いていたものの、まさか日本の神秘まで実在するとは思わなかったんだ」
唸るギイの言葉に小首を傾げる。日本の神秘なら、今まさに目の前に立っているぞ。私は大陸生まれだが、終焉の地は日本だった。
力こそ九割ほど失っているが、木っ端な妖怪に負ける事はない。そも私に勝てる妖怪など存在していない。我が負けたのは人の心だ────。
あの時、蒼月潮の意志に臆した。獣の槍は確かに恐ろしく強力な武器だったが、既に存在していない獣の槍に怯える必要はない。
その筈なのだが、獣の槍はまだ残っている。
いや、新しく鍛造してしまった獣の槍を蒼月潮は持っているのだ。貴様はただの画家だろう、そんな恐ろしいものを振り回してシャガクシャを追うな。
ソイツだけ殺してしまえば良いだろう。
あわよくば、確実に滅してしまえと思う。
「邪念を感じるのだが」
「乙女の悩みだ。気にするな」
「そういうことにしておこう」
ああ、そうしておけ。