日が傾き始めたその時、私達が跳び移る前に捕らわれていた屋敷が爆発し、倒壊した建物の一部や火の粉が燃え移り始めている。
その爆発に巻き込まれる前に逃げていく人達を追いかけようとした刹那、天井が崩れ、私達は五重塔の最上階に取り残されてしまった。
「巓ちゃん、火が、爆発してる!」
「うるさい」
私の事を髪の毛の中に包み込もうとする巓ちゃんに勝君を頼み、ゆっくりと傷だらけの阿紫花のお兄さんとしろがねさんの二人の手当てをしようとしたその時、巓ちゃんに顔を叩かれた。
「自分の状態を判断しろ、愚図。私はお前の父親に頼まれて来ているんだ。お前が死んでいたと知ればどうなると思う?」
「それはッ……いえ、ごめんなさい」
「そうですぜ、お嬢さん。あたしらがこんな掠り傷で死んだりする訳が無いでしょうに。それにあたしらより、あの兄さん達の方がヤバいでさあ」
お兄さんの言葉と指差す方に立つ鳴海お兄さんと黒い服のお兄さんは壮絶な殴り合いを繰り広げている。圧倒的に体格の良い鳴海お兄さんが有利なのに、黒い服のお兄さんも負けじと応戦している。
「奴さん、掴めば即座にへし折る禽拿術を使いやがるせいで兄さんも攻めあぐねてやすね」
「誰が、攻めあぐねるってぇ!!」
「ぐがあっ!?」
「……あらら、こりゃまたひでぇ」
地響きを起こすほど凄まじい踏み込みと同時に放たれた両手の張り手を受け、黒い服のお兄さんの顔が後ろに弾け、血飛沫を撒き散らす。
────が、しかし、彼は倒れるどころか押された反動を利用してバク転するように蹴りを放ち、鳴海お兄さんに顎を蹴りあげる。
「テメェ、洪家拳以外も使えるな」
「俺は骨の髄まで洪拳を極めるだけだ」
「形意拳も嘗めんじゃねえ!」
そう言うと二人は更に激しく打ち合いを始める光景に何故か巓ちゃんは不満そうに顔を歪める。……ひょっとして、私と同じように?
私の視線に気付いたのか。
巓ちゃんは「お前の考えている理由とは違う。アイツの声が嫌いなだけだ」と教えてくれた。そう言えば確かに虎のおじさんに鳴海お兄さんの声は似ているし、巓ちゃんもしろがねさんに似ていますね。
「ミコト、どっちが勝っている」
「えと、おそらく五分です。黒いお兄さんは勁力を受け流している、のかな?巓ちゃんなら分かると思うんですけど、人見知りだから」
「捏造するな。勝っているのは白猩々だ。身体の大きさに加えて、私に二度も挑んでいたダメージを考えれば当然の結果だろう」
そう言い終わると同時に鳴海お兄さんの足元に彼は倒れ込んだ。