「うっ、ぐうぅッ!!」
ころばし屋の空気弾を捌いていた冷静さは薄れ、疲労と疲弊によって荒々しく息を吐く才賀勝。あの時、才賀正二に託された小太刀を背負っているが、使えるようになるにはより時間を掛けるだろう。
ボフン!と空気の爆ぜる音。
私の依頼を受けたころばし屋は寡黙に才賀勝の事を倒すために攻撃を放つ。その音と軌道を読み、才賀勝は飛び上がると同時に海賊を模造した懸糸傀儡を操り、ころばし屋の帽子の鍔を軽く斬る。
「大分様になってきたか」
「ああ、少なくとも大抵の人形には遅れを取ることはなくなっただろう。だが、マサルは圧倒的に戦闘経験が少なくミコトやエレオノールに守られていた」
「故に、拷問紛いの稽古か?」
「そうだ。女性の君からすれば子供を痛めつけ、罵倒する僕はDemonかも知れないが、全てはマサルが生き残るために必要な事だ」
そう言うとギイは訓練用の懸糸傀儡を操り、ころばし屋と一緒に才賀勝に襲い掛かる。全く男とは自分のプライドばかり優先して面倒臭い生き物だ。
平助は自分のプライドより私を優先しているものの、自分の敵討ちに巻き込むつもりは微塵もないというスタンスを取っている。
しかし、アイツらは本当に健気な生き物だ。
「(それにしても黒賀の里には妖怪は住んでいないのか。ここまで古びた場所なら自由に動ける上、無駄に人を襲って喰らう必要もないというのに)」
山の中を見据えれば怯えたように竦み、逃げる木っ端で矮小な妖怪達。その中にも力自慢はいるらしく、私を睨み付けるが妖気を発すると消し飛ぶ。
全く不愉快な奴らだ。
もう少し強くなれないのか?
───刹那、空気弾が私に跳ね返ってきた。
受ける前に髪で弾いたが、わざとだな。
「……糟共が、殺すぞ」
「
「ぎ、ギイさん、テンさんは本気だよ!?」
緩やかに薙刀を取り出して、大気を吸い込み始める冥道の数を増やす。何びきか妖怪も入っていったが、私には関係ない事だ。
「それは、なにかな?」
「あの世に通じる洞穴───冥道だ。そして、お前を地獄に叩き落とすために日本を半分ほど消す」
「冗談でも止めとけ。巓」
「きゃんっ!?……きさまぁ!」
ベチンと力任せにお尻を叩かれ、思わず甲高い悲鳴を上げてしまい、顔を赤く染めながら平助を睨み付ける。だが、平助も顔を赤くして口許を手で覆っていた。
「ギイ、勝、ちょっと逃げるわ」
そう言って逃げる平助に追う。
許さんっ、よくも我に恥を掻かせたな……!