「本当に命さんってお嬢様なのね」
「そう、なのでしょうか?」
「普通なら知ってること全是知らないもん」
そう言ってファッション雑誌や恋愛雑誌を見せてくれる百合さんの言葉に小首を傾げる。お父様とお母様の様な素敵な恋物語に憧れていますけど、世の中の恋愛小説というのは意外と過激なのですね。
「そういえば命さんって糸色の血筋なのよね」
「え?えぇ、お母様がそうです」
「じゃ、じゃあ、本当にあるの?」
「ある、とは?」
どこか期待を込めて問い掛けてきた百合さんに聞き返すと「世界を揺るがすって言う禁断の本よ。前にお父さん達が話してたんだけど。十年以上前の日本滅亡の危機に何かしていたんでしょう?」と言われる。
十年以上前の日本滅亡の危機───。
そう言えば巓ちゃんは何かを知っているようでしたが、お母様も叔母様も何も教えてくれなかった。巓ちゃんには、何か秘密があるのでしょうか?
「百合さんは糸色家に興味があるの?」
「ウ~ン、そう言われると違うのよね。知的好奇心?っていえば良いのかわからないけど。英良兄さんと結婚する相手の事が知りたいのよ」
「……成る程、確かにご結婚する際に知らないことがあるのはいけませんね」
百合さんの言いたいことに納得し、長野県の糸色本家の事はあまり詳しく無いけれど。お母様や叔母様に聴いていた事を伝えていきます。
「命さんは何か秘密とかある?」
「秘密ですか?」
「あ、無理に聞き出したい訳じゃないから」
「フフ、大丈夫ですよ。百合さんにならお話しします、私の秘密は
そう言ってセーラー服越しに胸に左手を添えると百合さんの顔が強張る。申し訳なさや罪悪感に染まる彼女の頭を優しく撫でてあげる。
「百合さん、大丈夫ですよ。好きな人とお付き合いできて、結婚まで出来るんですから女の子の夢は半分以上叶っていますから♪︎」
「……そっか。幸せになってね」
私の事を応援してくれる百合さんに「ありがとうございます」と伝えて笑顔を浮かべる。お父様とお母様の様な恋をしてみたいと想っていたけれど。
こうして幸せになれるのもいいものです。
それに、しろがねさんと鳴海お兄さんの二人もこうして離れている間、仲良くなっていたら嬉しいんですけど。二人は、どうしているのでしょうか。