「ハアッ、ハアッ!」
私を横抱きに抱えて人混みを避けて薄暗い路地を走るお父様の腕の中で自分の身体に『並行世界の転写』を繰り返しているのに、私の傷はいっこうに治らない。
どの世界線でも私は首を絞められて、こうしてお父様に助けて貰っているのでしょう。私はとても申し訳なく思っているのに、お父様に守って貰える現実に嬉しくて笑いそうになってしまいます。
ごめんなさい、お父様。
今の命はとても悪い子です。
そう思いながら夜風で身体を冷やさないようにお父様のスーツに包まれている身体を縮めていたその時、槍を構えた集団が通路を塞ぐ。
グポォン…!と単眼を淡く光らせて私達を見据えるのは足軽殺駆達だった。後ろから仮面の割れた唐倶利武者が追い掛けて来ていて、逃げ場を無くした挟み撃ちの状態になっています。
「命、少し汚ないがフェンスは登れるかい?」
そう言うお父様に従って、駐車場を見る。
ゆっくりと私の事を見つめるお父様の言葉に頷き、室内履きではなく素足のまま冷たいコンクリートに立ち、私はパジャマのワンピースの裾が捲れるのも我慢してフェンスに飛び付く。
ジタバタと足を揺らしながらも頑張って登りきると同時に反対側に滑り落ちてしまい、ドサリと手や腕を擦り剥きながらも渡りきった事を伝えるために、お父様を見る。
「あ゛、おどざま゛っ!ぐぶっ、げほっ!げほっ!」
ベチャベチャと血を吐きながら、フラフラと痛みで動きがぎこちない身体を引きずってフェンス越しに足軽殺駆達の槍を奪い取って戦っているお父様を呼ぶ。
死なないで、一人にしないで…!
「トウッ!」
私の悲観を簡単に飛び越えて、お父様は棒高跳びのようにフェンスを乗り越えると笑顔のままに「この程度の事は経験済みだ。類を妻に貰うときはもっと大変だったからね」と励ましてくれた。
「しかし、あの人形達は何なんだ?命の事を執着的に狙っているようだが、まさか貞義兄さんの子供がまた刺客を送り込んできたのか?」
……そういえばお父様には
無断外泊も休学も怒られてしまうかも知れませんが、お父様ならきっと分かってくれる筈です。それに、英良さんのこともしっかりとお伝えしたいです。
フフ、嬉しくて心臓がドキドキしています。
「何だかこうしていると昔を思い出すな。絵本を読んで欲しいとせがんでいた命を膝に乗せて、ずっと家族だけで続くと思っていたのだが……」
はい、私もお父様とお母様が大好きです。