ぼんやりと窓の外を眺めていると凄い地響きと真っ黒な煙が立ち込めるのが遠くに見えてしまい、車を止めるようにおじ様にお願いしようとした瞬間、私の左手をお父様が掴んで言葉を制止した。
「
「っ。ごめんなさい、お父様。私は行きます!」
「待ってくれ!せめて使うな、お前の力は!」
私の事を真剣に案じて心配するお父様に謝り、私は車の扉を開けて真っ黒な煙を上げる巨大な天幕を張ったサーカスの会場へと向かう。
人混みを押し退け、酷く荒れた会場に電車が衝突し、野次馬に集まっている人も沢山いる。その中には瓦礫に足を挟まれていたり、頭や身体に怪我を負っている人が大勢倒れている。
ふと、視界の端に着ぐるみを身に付けた男の人が見え、必死に泣いている子供を笑顔にしようと頑張っている背中を見つけてしまった。
「べろべろばぁ!ど、どうだ!痛いの痛いの飛んでけ!えーっと、あとはなんだ?」
「うぇえぇぇぇッ…」
ゆっくりと男の人の隣に座り、足を掴んで泣いている女の子の頭を優しく撫でてあげ、ゆっくりとお母様に授かった
「もう大丈夫ですよ。
そう言って彼女の押さえる左足をなぞるように手のひらを翳し、蛍火色の光を放ち始める私の手に気づいた女の子の目から悲しみの色が消える。
「お姉ちゃん、まほーつかい?」
「フフ、みんなには内緒ですよ?」
私の言葉にコクコクと頷く女の子の頭を優しく撫でてあげ、ずっと彼女の傍に寄り添っていたお母さんに「もう怪我は大丈夫です」と伝えると涙を流しながら「ありがとうございます!」と感謝を言ってくれた。
ああ、良かったです。
「っ、ケホッ…ゲホッ、ゴホッ!」
「お、おい!?大丈夫かよ!」
「だ、だい、大丈夫です」
私の背中を擦ってくれる着ぐるみのお兄さんに返事を返しつつ、才賀の医療メーカーで製作して貰った吸入器をシャカシャカと何度か振り、吸入器を口に入れて霧状になったお薬をゆっくりと吸飲する。
「けほっけほっ、ありがとうございます」
「いや、俺も助かった。あの子も笑顔になったし」
「フフ、それなら良かったです。お兄さん」
「お兄さんって。いや、そうだが。俺は加藤鳴海って名前があるんだよ」
「かとうなるみ…さん」
ズキズキと痛んでいた心臓と肺の痛みも治まり、静かに彼の名前を呟く。なんだか男の人のお名前を呼ぶのは学校以外では初めてです。
「で、嬢ちゃんは?」
「あ、失礼致しました。私、
「さいが?まさか、お前が勝を?!」
「まさる?勝君を知っているんですか!」
「何が『知っているんですか』だ。お前らが」
「まさか、この事故に巻き込まれて?勝君は、私の弟は無事なんですか!?」
彼の言葉を遮って、そう叫んだ瞬間、なるみお兄さんの怖かった雰囲気は霧散し、大きな手で顔を覆い隠すと「おまえ、勝の姉貴なのか?」と問うてきた。
「はい。勝君のお姉ちゃんです」
そう言うとなるみお兄さんは更に頭を抱えてしまう。そこで漸く彼も怪我していることに気が付き、彼の頭を抱き締めてお母様に授かった『癒やしの力』を使い、彼の怪我を治癒する。