勝君の初登校日に着いていきたいけれど。私の学校は反対方向に加えて、いわゆるお嬢様学校なので着いていく事は出来ませんが、勝君にはしろがねさんがいる。
世界有数の大企業たる才賀と糸色の血筋を受け継ぐ私には、いつも婚約や兄弟、親戚など男の人をご紹介しようとする同級生や下級生ばかりですが、まだ一度も恋をしたことのない私に男の人の良し悪しは分からない。
「命、また高等部の図書館に来ていたのか」
「あ、巓ちゃん。うん、ちょっとだけ」
ガラリと図書館の扉を開けて入ってきた着物姿の従姉妹であり、その圧倒的なカリスマ性と文武両道の性格ゆえに高等部一年生で生徒会長になってしまった秋葉巓の言葉に頷く。
「お前の悪感情は糸色景のソレに似ているな。この世の全ては自分の所為によってねじ曲げると怯え竦み、愛い姿を晒していた。だが、お前はアイツではない」
「えと?」
「羽虫の贈り物だ。私を足代わりに使った事、必ず報いを受けてもらう」
そう言うと私にまた小箱を差し出してきた。
この前は次郎丸っていう人形だったけど。はむし?さんは私に人形を与えて、何をしようとしているのかな。そう小首を傾げながら小箱の紐を解き、蓋を開ける。
「………」
メガネと古い本。
いえ、この場合は冊子と言うべきなのかな?と思いつつ、冊子を開いても何も書いていない。……これは、はむしさんのイタズラなのでしょうか。
ふと、メガネを手に取り、冊子を開く。
「…わあ、文字が見える!」
面白い仕掛けに驚き、パラパラと冊子のページを眺めていたその時、著者の名前でまた私は驚く。奇天烈斎。その名前の隣に『糸色景』の名前がある。
「高祖母様、未来を見えるのは本当なんですね」
この発明品の作り方を知ることが出来れば、きっと勝君やしろがねさんの役に立てる。二人を励ますことも、出来るかも知れないです。
巓ちゃんが私に持ってきてくれたのも、きっと私を励ますためだったんだよね。フフ、嬉しいなあ。私だけが大好きだと思ってたけど、巓ちゃんも私を大好きに思っててくれたんだね。
「よし、頑張って作ろう!」
「才賀さん、図書館ではお静かに」
「は、はい、すみません」
図書委員の先輩に謝りつつ、私は小箱にメガネと冊子を戻して駐車場に停まっている筈のお迎えの車に向かって歩き出す。二人のために私は頑張って人形や発明品を作ってみせます。
そう意気込む私の真横を金色の蝶々が通り、その綺麗な羽に目を惹かれてしまう。そういえば、お髭が蝶々の人に会ったことがあるような……?