「巓、コイツは俺が相手するぞ」
「好きにしろ。私は弱いヤツに興味は無い」
ザアザアと降り注ぐ雨の中、命の気配を探ることに集中する私を守るように構える平助と、目元以外を隠したガラクタが睨み合い、同じ構えを取っている。
「私の名前はブリゲッラ・カヴィッキオ・ダ・ヴァル・ブレンバーナ。人間の作り上げたありとあらゆる格闘技をマスターした
「俺は黒賀平助、洪家拳だ」
名乗る必要があるのか?と思いながら平助の背中を眺めていた刹那、髪の毛を伝って電流が流し込まれる。だが、私の身体に到達する前に妖気で電流を塞き止める。
しかし、今の電流で大体の場所は把握した。
命としろがねは雲の上に停滞している乗り物に拐われている。スペアポケットをあの羽虫に渡してしまったのは完全に私の失態だ。
アレが有れば私が飛び込んで行けたものを───。
「噴ッ!!!」
「邪ァッ!!」
平助の毟り抉る爪を真っ向で受け止め、指の力のみで張り合うガラクタに視線を向ける。僅かに漂う火薬の香り、おそらく外套の内部に火器を仕込んでいるな。
私の思考など感じ取れていない平助の振るう左の虎爪拳を右手の手の甲で弾き、そのまま腕の内側を滑るようにブリゲッラは踏み込み、平助の胸に向かって鋭く深く肘打ちを叩きつける。
「ゴフッ…!裡門頂肘かよっ」
「予め言った筈だ。私は全ての格闘技をマスターしているとな、貴様の使用する中国拳法のデータも既に私は織り込み済みだ!!」
「成る程、嘘じゃないわけか」
口許を伝う血を親指で払い、平助は構える。
しかし、その構えは私も知らないものだ。
「なんだ、そのふざけた構えは」
「ふざけてねえよ。とっておきだ」
そう宣言する平助は身体を半身になり、乙の文字を描く独特の構えを取る。丹田法の一種か?と小首を傾げる私は愛する
解せんのは平助が、それを知っている理由だ。
いや、それよりも思うことはある。
「平助、私に加減していたな?」
「俺なりに本気だった!」
そう言っているが、焦った顔だ。
命を取り戻したら問い詰める理由が出来た。今度は私の考えが分かるのか、平助は気まずげに目の前に立つブリゲッラを見据える。
「貴様の奥の手、見せて貰おう!」
「見せてやるよ!」
やは流中国拳法の動きではない。私の知っている動きだが、見るのは初めての戦い方に不満を向けつつ、平助の戦いを見守る事に徹する。