「全ての格闘技をマスターしたんじゃねえのかァ!」
「クッ、そんな即興に乗るか!」
平助の戦い方を即興と切り捨てたブリゲッラの動きは変わらず中国拳法のままだったが、両の手を胸の前に置き、全てを包み込むように開手に構えた平助の防御を抜けることは出来ていない。
「赤心に梅花在り、だったか?」
そう私は呟きながら空の上に停滞する船に髪の毛を伸ばす。しかし、船の周囲を覆う電気の結界に髪の毛は阻まれ、船を締め付け、叩き落とす事は無理だ。
「流石、巓は博識だぜ」
「所詮、防御一辺倒の構えだろう!」
「バーカ。お前らが生まれる何千年も昔から武術は培われてきたんだよ!」
ブリゲッラの上下諸手突きを下から掬い上げるように往なし、流れるように平助はヤツのがら空きになった両脇に拳槌を叩き込み、内部の歯車を圧壊する。
「ぐっ、ぬおぉ…!」
ミシミシと心地好き音と苦悶の声を聴きつつ、私の髪の毛に纏わり付く存在を感じる。クマの縫いぐるみ。さっき破壊したガラクタはまだ地面に転がっている。
……成る程、データを引き継いで二機目を投下しているというわけか。普通の人よりも体力の劣る命にとって最も相性の悪い相手を構成しているわけだ。
「私の知らない格闘技などぉ…!」
最後まで自分の意見を貫き通そうとしたブリゲッラの放った右手による突きは平助の繰り出した抜き手に割かれ、真っ二つに身体が切り裂ける。
クク、なんとも見事すぎる一撃だ。
「まあ、中々に悪くない相手だった」
「平助、才賀と他の奴らを集めに向かう。命としろがねが奪われているからな、悠長に会話を交わしている時間も惜しい」
「お前の従姉妹だもんな。絶対に助けるぞ」
「当然だろう。それと、どうしてお前が赤心少林拳を使えるのかも教えてもらおうか?」
「た、旅の僧侶に習った」
……何を言っているんだ?と平助の顔を見たとき、愛する♡秋葉妙《かあさま》に言い寄っていた男の顔が流れ込んできた。そうか、強羅の仕業か……。
アイツは殺す。
私が平助と出会う前から交流があるだと?ふざけるな、私の方が愛されているということを貴様に見せつけて、その馬鹿げた脳を破壊してやる。
「……巓、何か顔が怖いぞ?」
「生まれつきの美人だ」
「確かに、巓はずっと綺麗だ」
いきなり変な事を言ってきた平助に呆れていると雨雲が裂け、巨大な船が見えた。あの船から命の匂いがする。やはり、捕まっているな。
全く、世話の焼ける愚図だ。
さっさと助けて感謝の言葉を聴いてやるとしよう。