「やあやあ、待っていたよ。才賀命」
「っ、貞義のおじ様…」
フェイスレスがにこやかに親しく私に話し掛けてきたのは才賀貞義の姿です。お父様のお兄様として、私に優しくしてくれていた貞義のおじ様の姿です。
不愉快に感じる。
フェイスレスとしての立ち振舞いは怪しく悪意を感じ取ることが出来るのに、貞義のおじ様の顔や姿に変わると悪意は霧散してしまう。
私の知っているおじ様に変身する。
ゆっくりと貞義のおじ様は私の肩を抱いて、飛行船の揺れが起きない無震動の会食の会場を歩き始める。
まだ、今よりも小さかった子供の頃、才賀グループのパーティー会場でお父様とはぐれて、泣いていた私に手品を見せてくれた時の笑顔が私を見下ろす。
「此処に座ると良い」
「ありがとう、ございます」
椅子を引き、私に座るように告げるおじ様にお礼の言葉を伝えると彼はクツクツと楽しそうに笑いながら、真向かいの席に座り、ひじ掛けに肘を突き、頭を支える。
「やっぱり善治の教育は行き届いているな。感謝と謝罪の言葉は素直にハッキリと言えるのは素晴らしく、そして品性を損なわない手段だ」
そう言うと貞義のおじ様は透明な球体の中に封じ込めた私の四次元ポケットを取り出して見せた。発明品は一つ残らず、彼の手の中にある。
私に出来ることは何もない。
それに、この会食の会場もそうです。観葉植物に見立てた
電光丸も何もかも残っていない私は彼らにとって血を吸い上げるためだけに存在している人間でしかなく、貞義のおじ様もそのつもりなのでしょう。
正直に言ってしまえば、とても怖いです。
「既に君の力は奪って貰っている。このカードを見せておけば理解すると彼から聴いているよ」
コトリとテーブルの上に置かれた物に目を見開き、まさかと不安と焦りに身体を強張らせながらも私は手のひらに意識を集中させる。
「使えないっ」
糸色景様から、お母様から受け継いだ『神通力』が身体の中から抜け落ちている。ううん、完全に奪い取られてしまっているんだ。
ツカサ君、貴方があの何度も復活する
「彼の目的を聞くつもりはなかったが、随分と熱心に君の身体を弄っていたね」
「ひっ」
「ククク、冗談だよ。たんなる冗談さ♪︎」
その言葉に嘘はありませんでした。
────けれど。私の力はもう無くなっていた。
誰かを助けることは、もうできない?