「フェイスレス、貴様っ!」
しろがねさんが怒りで飛び出そうとするのをアルレッキーノが静止し、静かに私の事を見下ろす。まあ、流石に分かりやすいですよね。
「これで君の希望も手段も潰えたぞ」
「希望は消えませんよ。私が居ますから」
にっこりと微笑みを浮かべて右手を天に翳す。
「糸色景様は言いました。私が望みさえすれば、運命は絶えず私に味方する。貴方の想い描く未来なんて容易く覆して差し上げましょう!」
そう私がフェイスレスに宣言した瞬間、目の前で溶解液で溶けた筈の四次元ポケットが私の手のひらに現れ、お腹に張り付けるよりも早くポケットに手を入れる。
───引きずり出したのは、黒い人形だ。
「あるるかん、だと!?」
「───その練習用の試作型です。私は黒賀の村で二週間ほど過ごしていたんですよ?ただ何もせずに好いた人に尽くしているだけではありません」
愛する
いいえ、愛する
「お互いに愛を抱き、理解し、尊重し、尊び合える関係でなければ幸せは掴めない。愛を押し付けるのではなく、愛を分かち合う事こそが恋愛です!!」
「才賀命、良いことを言っているようだがお前のアシハナ以外と付き合っていたという話は聴いていないぞ」
「命短し恋せよ乙女です♪︎」
アルレッキーノの言葉にそう私は答える。
「何より運命は絶えず、味方です」
四次元ポケットに手を入れてフラフープを模して作った私やしろがねさんが同時に潜ることが出来るサイズの発明品『とおりぬけフープ』を放り投げ、筋肉質な肉体を模造した型番とは違う『決め技スーツ』のベルトを腰に巻き付ける。
バックルに風車の装置を着けた新型です。
とおりぬけフープより私に意識を向けたフェイスレスに背中を向け、あるるかんを構えるしろがねさんに抱きついて、窓を叩き割って貰う。
「さようなら」
「次はお前を倒す…!」
そう言うとしろがねさんは私を抱き上げたまま飛行船の外に飛び降りる。フフ、なんだか愛の逃避行という言葉が思い浮かんでしまいますね。
「ミコト、パラシュートを!」
「分かっています」
あるるかんの背中に移動する私の足をあるるかんが掴み、ゆっくりと私は深呼吸を繰り返しながら、左手を突きだして円を描き、腰溜めに構えていた右手を左斜め上に突き上げる。
大百科の第三巻。
糸色景様とは異なる筆跡の発明品および強化装甲服の外見と能力を模して作った発明品。ほとんどテストしていないものですが、私は絶対に使えると信じている。
「セイリング……ジャンプ!!」
その掛け声と共に私の周囲半径3m圏内の重力は宇宙空間に近しい低重力状態を引き起こす。
「浮いている?」
「いえ、落下速度を遅くしただけです。「しろがねさん、急ぎましょう。おそらくフェイスレスの目的は勝君の身体です!」
そう説明しながら空を見上げ、すぐに視線を目の前に見える孤島に移す。