【完結】からくりと踊り謡う薄命の花   作:SUN'S

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巓様の視点になります





再び、歩き出す 急

「羽虫。お前の目的は何だ」

 

「巓君、私は羽虫ではなく蝶なのだが。……まあ、訂正して貰えるとは思っていないけれど。ふむ、そうだな。私の目的は君達の幸せを見届ける事だろう、それも彼女と交わした約束だからね」

 

「糸色景。やはり、世界の流転はあの者だけか」

 

私の事を真に慈しみ、私の願を思ってくれた始まりの女だ。その血筋の者にも愛を注がれ、人として産まれ直した私の秘密を知っているのは、愛する秋葉妙(かあさま)と、このいけすかない羽虫だけだ。

 

ホムンクルス等と言う気色の悪い機械と人間の中途半端な肉体に生まれ変わったところで、私を越えることは不可能だと分からないのか。

 

「しかし、白面が男に興味を持つとはね」

 

「黙れ羽虫。私は雌雄の違いに興味はない」

 

「では、どうして黒賀平助を助けたのかね?」

 

「誰だそれは?」

 

「君の胸をこう、ガッ!と掴んだ男だ」

 

…………ああ、あの糟の事を言っているのか。私がアイツに興味を持っていると羽虫は思っているようだが、私はアレに興味は持っていない。

 

命や他の女が恋だか愛だかに喚いているから確かめようとしているだけだ。尤もアレは私に変わった感情を抱き、情欲や恋慕を向けているけれど。

 

随分と変わった人間だ。

 

「そもそも何故アレは私に発情する?」

 

「人間的に言えば絶世の美人なのだよ」

 

羽虫の言葉に私は首を傾げてしまう。

 

顔や身体の見てくれに惑わされて何になる。私は人間に生まれ変わった事が嬉しくて綺麗に身体をケアしているし、愛する秋葉妙(かあかま)にスキンケアなるものを学んでいるだけで、変わったことは何もしていない。

 

「掃除終わったぞ。ドクト、なんでここに?!」

 

「Thank you。後でお給料を渡そう」

 

私を見るなり慌てふためき、うるさく囀る糟に溜め息を吐いて紅茶を飲む。悪感情を喰らうことは今も出来るが、今は大して美味く感じない。

 

チラチラと私を見る男の視線は斯くも心地好き善い感情だ。私に恋慕の意思を向けるその眼差しは面白く思える。ナガレ(とうさま)が愛する秋葉妙(かあさま)に向けているのは、こういう感情なのだろう。

 

「あーっと、巓さんだっけ?」

 

「クク、私の名を呼ぶときに上擦ったな」

 

「平助君、彼女は心を読めるよ」

 

「は?!んなッ!?」

 

「お前の向ける邪な感情は中々だぞ。助兵衛め」

 

艶めかしく微笑んでやれば顔を赤熱させ、アレは「俺の馬鹿野郎があぁっ!!!」等と騒々しく喚き、外に飛び出していき、巨木に額を叩きつけている。

 

「なんて残酷な事をするんだ。君は」

 

「クク、まだ我は悪感情も喰えるからな」

 

そう言って巨木を殴り、平静を保とうとする男の脳裏に私の姿が浮かび上がる。あの屋敷で笑ったときの顔を思い出しているが、あんなものに何の理由があるんだ。

 

 

 

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